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俺はその場でぴたっと立ち止まった。
久し振りに訪れた俺の憧れ、そう、ココは女子高。
友達から姉ちゃんの制服借りてきた、冬物セーラー服にカーディガン、スカート短めに調整して、寒いから足には黒タイツ。
そう、俺はどっからどー見ても女子高生。
そんな俺に飛んできた厳しい一声。
振り返ってみれば。
かっこいい真っ黒ジャージで見るからに体育教師な男前先生が渡り廊下に立っていた。
デジャブってこーいうこと言うのかな?
「スカート短けぇ」
「テヘヘ」
「春に浮かれた虫みてぇにフラフラしやがって」
「虫? ちょうちょだったらうれしーな! でもまだ冬じゃん? まだクリスマス前だよ?」
巽は苦笑した。
放課後、今から部活指導に行かなきゃならないバスケ部顧問は大股で俺の真ん前にやってきた。
「何してんだ、コーイチ」
「原点回帰」
さっきまで女子の皆さんが行き来していた渡り廊下。
いつの間にか俺と巽センセーの二人きり。
寒くなって、気がつけば消えてなくなってる夕日が足元に届いて、ほんのちょっとだけ、あったかいよーな。
「ねーねー、巽さん」
「バカ。ここでは先生だ」
いつもは先生って言ったらアドレナリン上昇して怒るくせ。
「巽せんせー」
巽は肩を竦めてもっと俺に近づいた。
自分のテリトリーで無防備だった体育教師の隙を俺は見逃さなかった。
ジャージの胸元掴んで、思いっきり背伸びして、いつ女子が通るかもわからない場所で。
キスしてやった。
「ッ……おい」
珍しく焦る巽。
「好きだよ、巽さん」
俺は告白した。
「巽さんのこと捨てたりしないから安心していーよ?」
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