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「ふぁぁ~……しゃーわせ~……」
檜風呂の浴室も嗅ぎ慣れない高級っぽい匂いがした。
「巽さーん……猿、猿……」
「猿がどうした」
猿の写真撮らないと……野生の猿なんてレアじゃん……テレビのニュースでしか見れないじゃん……。
「コーイチ?」
むにゃむにゃ……あったかくて……猿がいて……じゃない……巽がいて……むにゃ……しゃーわせ過ぎて……眠気が……。
「おい」
……zzzzzzz……
「コーイチ起きろ、そろそろチェックアウトだぞ」
え??????????
目を開ければそこにいたのは裸じゃない、浴衣姿でもない、しっかり服を着込んだ巽だった。
え? だってさっきまで二人いっしょに風呂入って……違う、和室で膝枕してもらってたんだっけ……?
あれ? 外、なんか眩しい。
ん? 巽、今なんつった?
え? あれ? ん?
「後十分でチェックアウトだ」
「はっっっっ?」
そーなんです。
眠気に負けたんです、俺。
冬休み温泉一泊旅行、猛烈らぶらぶになるはずだった夜。
俺、ガチでぐーすか熟睡しちゃいました。
「た、巽さん、あの、その、ううう、ごめんなさい!!」
帰りの車でそりゃー何度も巽に謝りました。
「せっかくの旅行だったのに、俺ぇ、寝ちゃってスミマセンでしたぁっっ」
ハンドル握った巽はただ浅く頷くだけ。
……そりゃー怒るよ、当然だよ、だって一緒にお風呂入って、先に勝手に寝ちゃうなんて。
……その後、風呂から出して、体拭いて浴衣着せて、ベッドまで運んで、さ。
……お、俺だったらちょっぴりキレます。
「巽さぁん……」
「もういい、コーイチ」
巽の横顔が何だか遠く感じる。
うえぇぇん……俺ってほんとばか……。
ちなみに温泉は一泊、だった。
そんで今日は巽んちにお泊まり。
「えええっ、巽さっ、っ、そんなっ、もういきなり……?」
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