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去年、高校二年生の体育祭、名物となっている仮装リレーでコーイチはJKコスプレをした。
「かわいーぞ、コーイチ!」
友達のクラスメート、よく知らない先輩男子にまで「え、野郎なの?」「女子じゃないの?」と次から次に顔を覗き込まれて、おばかなコーイチはすぐ調子に乗った。
調子に乗った天罰なのか。
アンカー緒方の目の前で派手にすっ転んで、あわや、最下位になりかけた。
しかしながら化学部から借りた白衣を羽織っただけの緒方、白い裾を靡かせて同級生を次から次に追い抜き、平然と一位の座を掴み取った。
「バカが、このバカ、しょうもねーバカ」
救護テントで休んでいたコーイチは本気モードの緒方に散々バカ呼ばわりされた。
ううう、そりゃー確かに調子に乗った正真正銘のバカですけど!?
「大丈夫か?」の一言くらいあってもいいんじゃね!?
一番コーイチが気に入らなかったこと。
それは緒方が自分の女装に対してなーんの反応も見せなかったこと、だ。
おばかなコーイチは珍しく根に持っていた。
いつか緒方に『まじかよ……かわいい』と言わせてやりたいと思っていた。
そんなわけで、とある土曜日。
せっせと貯めていたお小遣いで買い求めたコスメ道具やらJKコスプレ一式でフル装備。
女子向けファッション雑誌を参考にし、洗顔後に化粧水ぱしゃぱしゃ。
下地とファンデぬりぬり、チークぽんぽん。
アイシャドウを重ね、マスカラぬりぬり。
眉は太すぎず細すぎず、グロスぷるぷる、長めの髪をシュシュで一つ結び。
約三十分でJK女装コーイチの出来上がり。
ぱしゃっと自撮りし、グループメールにのっければ友達からは「かわいーぞ」と次から次にお返事が。
よっしゃーーー!! これで緒方だって俺のこと「かわいい」って認めてくれるはずーーー!!
緒方に「かわいい」って言わせたるーーー!!
現在高校三年生、ハイテンションなコーイチは意気揚々と緒方宅へ向かった。
ちなみに約束はしていない。
まーいるでしょ。
緒方、昨日ちょっと風邪っぽかったし。
まだ十二時なってないし、だらだら寝てんじゃない?
そうしてマンションのエントランスに到着したコーイチは緒方宅の部屋番号を押してインターホン呼び出しを。
なかなか出てこない。
あれ、まじ寝してる?
緒方んちって、共働きで、土曜日でもご家族様誰もいないってパターンが多いんだけど。
まさか緒方本人もいないとか?
やっぱ約束しておくべきだったかと、あれだけハイだったコーイチのテンションがガラガラ崩れかけた、そのとき。
「はい」
「あーーーっ、緒方っ!? 突然だけど来ちゃった!! いれていれて!!」
傍から見れば軽いJKだろう、実際は軽いおばかDKだが。
「緒方ー!! どうどう、似合う!? 似合うでしょ、ねっねっ……うわ!!??」
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