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「お前そこまで女装気に入ってんのかよ。バカじゃねぇの」 「ひーーーっさわんなっ捲んなーーーっ!」 「意地でも脱がして汗くせぇシャツ今すぐ着せてやる」 ずらりと並ぶロッカーの前でガチで揉み合う二人、だが所詮力の差は歴然、体格の違いが端的にモノを言う。 よってコーイチは。 素肌につけていたブラジャーを緒方に目の当たりにされる羽目に。 さすがに手を止めた緒方にコーイチは、今度は、まっかっかになった。 「み、三里が、せっかくだからって……でも意味わかんねっ……ここまでやる意味なくないっ?」 「……じゃあつけんじゃねぇよ」 「つ、つけたら……ご褒美にラーメン奢るって言うから」 「……しょうもねぇ食い意地だけは張ってんのな」 つーか、だから、近いって。 俺相手に壁ドンすんな。 てか下は絶対死守しねーと、 「まさか下も女物つけてるとかねぇよな」 ぐはぁっっっっ。 「……プライドねぇのか、そんなにラーメンに飢えてんのか」 「お、緒方だってカレーに飢えてるくせにぃ……っ」 「俺はカレーよりプライドの方が大事だ」 見せろよ。 「えぇぇえ……?」 「俺に無理矢理脱がされんのと自分で見せんのとどっちがマシだよ」 緒方……目が据わってるぅ……かっこいい、じゃねぇっ、怖ぇっっっ。 「ラーメン奢ってやるから見せろよ」 そ、その発言もなかなかなレベルでプライドなくねっ……? 「ぜ……絶対奢れ、トッピング全乗せで奢れ……っ」 そう思いながらもプライド全壊の行為に出たのはコーイチ自身だった。 両手壁ドン中の緒方が真正面に迫る状況下、ぷるぷる震える両手でスカートをたくし上げていく。 精一杯横を向いて、涙目にまでなって、でもトッピング全乗せラーメンの誘惑には勝てずに。 ブラとお揃い、ホワイト地にピンクの花柄がラブリーキュートなランジェリー、ご開帳。 「も……もういい……っ? しぬ……っ」 黒ストッキングで覆われているのがまた卑猥というか、フェチ満点、ヤラシサ抜群というか。 「これ……替え玉おかわりっ……一杯じゃ足んない……っ」 「……俺もしぬ」 「ふぇっ?」 「お前ほんと何考えてんだ」 覚えのある声色にコーイチは何度も瞬きした。 いつになく低音で熱もつ声。 鼓膜に刻みつけられた、最近もっぱらお世話になっている不埒な回想において何度も脳内再生された男艶ボイス。 やばい。 この声、これ以上聞かされたら俺の体によからぬ条件反射起こる、もっと状況しぬしぬ展開にな、 「スケベが」 『腰揺れてんな……スケべ』 前回と同じ台詞を繰り返し、緒方は、全体的にぷるぷる震え出したコーイチにさらに迫った。 ほんのりグロスに色づいて艶めく唇に、ファンデ乗りのいい瑞々しい肌に、満遍なく潤んだ双眸を睨みながら、 「責任とれ……っ」 高校生にしてはキレ味のイイ眼光がほんのちょっと緩んだ。 「俺の体ぁ……スケべになったの……緒方のせぃだもん」 発情しつつある下半身にクラクラし、恥ずかしさやら情けなさを募らせつつ、涙いっぱいの双眸でコーイチも緒方を睨み返す。 「別に元カノとヨリ戻したっていーけど……俺のこと、ぼっちにすんなぁ」 戻してねぇよ、バカが。

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