206 / 241
38-看病しちゃうぞ!
ゴールデンウィークだ!!!!
十連休だ!!!!
遊ぶぞ!!!!
「悪い、コーイチ、明日からの予定が駄目になった」
ガーーーーーン!!!!!!!!
明日から十連休、ウハウハが止まらない金曜日の夜、巽からまさかの電話が……来やがった。
「えぇぇぇえ」
「そんなしょ気た声出すな」
「だってだってだってだって!!」
明日の土曜日はずっとずっと見たかった映画の続編、見に行く約束だったじゃんか。
何着ていこーか、おにゅーの服とか最近のお気に入りとかベッドに並べて、今、テスト勉強よりも真剣に考えてた……それなのにぃ……。
「うぇぇ……」
「こんなことくらいで泣くな」
「泣くわ!! ぎゃん泣きするわ!! うぇぇぇえん!!」
「泣き喚くな、子泣きジジィか」
なんだこいつむかつく!!!!
「……ごほッ」
え。
巽、咳してる。
そういや声もガラガラしてるような。
「巽さん、風邪引いたの?」
スマホを両手で持ち直して聞いたら、しばし無言、そしてボソリと言われた。
「ウチに来るんじゃねぇぞ、コーイチ」
「巽さん!!!!」
「来るなって言っただろうが……」
「看病しにきました!!!!」
「声がでけぇ……」
マンション角部屋で一人暮らしやってる巽の元へ、俺、突撃訪問しちゃいました。
「うつるから来るなって、あれほど……」
ゴールデンウィークの始まりにふさわしい、真っ青に晴れた空。
外出洗濯お掃除日和な土曜日、気持ちのいい爽やかな風が吹き抜けていく真っ昼間。
巽は上下スウェット、寝癖つきの黒短髪はボサボサ気味、ぼんやりした目で俺を見下ろした。
「熱あるって言っただろうが……」
どうしよう。
病気してる巽もかっこいい。
珍しく弱ってるかんじがたまんねー。
「聞いてんのか、コーイチ……ったく……今日は構えねぇからな」
突撃訪問した俺のこと、それ以上怒ることもなく、巽は中に招いてくれた。
なんだかんだ優しい巽のあと、ついていって、背中にくっつこうとしたら。
「駄目だ、くっつくな」
「だいじょーぶだよ、俺若いもん、おっさんの巽さんから風邪菌もらうわけねーもん」
「俺はまだ二十代だ、オッサンじゃねぇ」
頭、わしって掴まれて遠ざけられて、巽の手に触ってみたら、うわ、熱い、ガチの病人だ、これ。
「熱何度あるの?」
「さっき測ったら三十九度手前だった」
「どれどれ」
背伸びして巽さんのおでこ触って、自分のおでこと比べてみた、これやってみたかったんだよ! うーん、でも違いはよくわからない!
「ほんとだ、三十九度手前っぽい」
巽はテキトーなこと言った俺に苦笑して、ちょっと咳き込んで、ベッドに腰掛けた。
「出かける気満々の格好じゃねぇのか、それ」
そりゃー最初は映画行くつもりで今日のコーデ考えてたんで?
服もメークもプチプラ尽くし、大きめサイズで五分袖の白パーカートレーナーにストライプ柄のふわふわミニ丈バルーンスカート、んでコンバースざっくり合わせてきました、んでスニーカー用ソックスは早速脱いで裸足です、やっぱ楽チン裸足になれる季節さいこー。
「この格好は今日一日巽さんの看病・お世話するコーデです」
「……風邪がうつって残りの連休寝込む羽目になっても知らねぇぞ」
「おっさんの風邪菌なんか余裕で撃退するもんねーだ」
「……」
「いででででッ、暴力反対ッ、ほっぺたつねんなッ!!」
ともだちにシェアしよう!