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看病と言ったら第一にあれだ。
やっぱごはんでしょ。
「えーと、溶いた卵を入れたらすぐに掻き混ぜて、すぐに蓋する、と」
「何か手伝うことあるか」
「こらっ、病人は休んでてくださいっ」
「……病人相手に手厳しいのな」
「ほらほらっ、早く早くっ、ベッド戻れーーーっ」
キッチンにやってきた巽の背中をぐいぐい押してベッドに強制移動。
今日は俺がお世話するんだもん。
巽には休んでてもらわないと。
さすがにカレー好きとは言っても病気中だとヘビーなはず、そう思って、巽と行ったことあるスーパーでささっと買い物して、お粥、作ってます。
もちろん初めてっすよ。
スマホでレシピ検索して、見よう見まねっすよ、簡単そうに見えてゴマ油微調整した味つけとかネギ刻んだりとか、地味に大変っすよ。
「いででッ、指切ったッ」
「おい……」
「だーかーら、こっち来んなっっ、ベッド戻れっっ」
何かある度に様子見に来る巽をベッドに強制移動、てか俺のこと心配しすぎでしょ、保護者か。
巽に休んでもらうために来たんだから。
映画見たかったけど、うん、しゃーない。
やれやれ、ちょっと味見してみよ、ふーふー。
「あぢぢぢッ」
「火傷したのか、コーイチ……」
「あっち行けーーーー!!」
そんなこんなで出来上がりました、ネギとたまごの中華風あっさりお粥。
それぞれお茶碗に入れて、自分の分はダイニングテーブルに運んで、もう一つはベッドに横になっていた巽のところへ……。
「俺もテーブルで食う」
「え!? だめだよ! 病人はベッドで食べるの常識じゃん!?」
「ここだと食べづらい」
「俺が食べさせてあげるっ」
木のスプーンに一口分、ちょこっと掬って、ちゃんとふーふーふーふーして、体を起こした巽の口元へ。
「巽さん、あーんっ」
「……」
巽は……食べてくれた。
最初の一口だけ。
「向こうで食べる」
俺から茶碗を奪い取ってテーブルへ、ちぇっ、今の「あーん」こそ看病の醍醐味なのにさ。
まぁ全部「あーん」で食べさせるのも地味にきついか、俺が。
「いただきます! ん! うまい!」
「そうだな」
「上手!? 俺お粥つくるの上手っ? 初めて作ったんだよ!!」
春季選手権大会も終わったとかで、来たる高総体に備えてゴールデンウィーク中はバスケの部活動もお休み、十連休初日に体調を崩してしまった体育教師は一回だけ頷いた。
五回くらい頷いてもらっても構わないんだけどなー。
「カレー以外の得意料理ができたな」
「そだね、これなら胸張って言えるよね、巽さん、おかわりいる?」
「いや、大丈夫だ」
俺がおかわりして戻ってきたら、昨日病院からもらった錠剤の薬をグラス一杯の水で巽はゴックンしていた。
はー。
お薬飲んでる巽もかっけぇ。
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