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はぁ、でっけぇ手。 爪もでっかいからマニキュアぬりぬりしやすかったなぁ。 ほらほら、巽とお揃い。 ピンクってのがウケるけど。 ほんっと、指の長さも違うよなぁ、何摂取したらこんな成長すんだろ、香辛料? 俺もバスケやってたらこんな男前な手になってたかなぁ? 血管ムキムキ。 迷路みたい。 クンクン、当たり前だけど巽の匂いがする、クンクン、クンクン…… 「何やってんだ、コーイチ」 寝てると思ってた巽に声かけられて、俺、ぎょっとして、まっかになった。 そろーり、視線を向けてみれば、西日に眩しそうに細く目を開けている巽がこっちを見ていた。 「俺の手の匂い嗅いでんのか」 あぅ……わかってるくせ、いちいち言わなくたって……。 巽は険しげに欠伸一つして、クンクンしていた俺の頭をわしわし撫でてくれた。 うはぁ、きもちいい。 シュシュで一つ結びした髪の毛、乱れっけど、巽に頭ナデナデされんの、すっげぇ好き。 でもそろそろ帰んないとな。 「巽さん、俺、そろそろ帰ろーかな」 俺の頭をわしわし撫でていた手がぴたりと止まった。 「お粥、大目に作って、まだ残ってるから。夜ご飯に食べてね」 「……」 「あ、もう食べる? あっためよーか」 まだちょっとひんやりするから、ブランケットを肩に引っ掛けて、立ち上がろうとしたら。 「今日一日俺の世話するんじゃなかったのか」 手首を掴まれ、その場に引き留められて、横顔に夕日を浴びた巽にそんなこと言われた。 「えーと、さすがに風邪引いてる巽さんとこにお泊まりすんのは、迷惑かなぁって……思ったり?」 「お前にも気遣いの精神備わってるんだな」 俺は膨れっ面になった。 布団の下から腕を伸ばしている巽をジローリ見下ろしてやった。 「ばかにした。今、かんっぜんに俺のことばかにした」 小ばかにされることは日常茶飯事だから本気で怒ってるわけじゃない俺を、巽は、じっと見上げてきた。 「まだ帰るなよ、コーイチ」 う。 何だよ、どしたの、急に。 いきなりそんな「かまちょアピール」するなんて反則じゃね? 「じゃあもうちょっといる」 ころっと服従した俺がベッドの横にしゃがみ込んだら、ふわふわ布団を大きく持ち上げて「こっち来い」って誘われた。 え? まさかね? 違うよね? だって、巽、風邪引いてる病人だもんね?

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