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「うっ……うわぁぁぁんっ!! ちゃんとお風呂入らせてって言ったのにぃ……!!」 ぎゃんぎゃん騒ぐコーイチに巽はこれみよがしにため息をついた。 「んなっ……人にのしかかっといてため息つくなぁ~~!」 ベッドに押し倒され、ブーツを履いたまま両足の間に割って入ってきた巽に耳までまっかになったコーイチ。 「もう待てねぇ」 そう言われてぐっと詰まった。 驚きやら、嬉しいやら、怖いやら、緊張やら、こんなん心臓もたねーやら、ぺちゃんこな胸の内でいろんな感情がごった返して「うぐぐ」となり、その言葉をやっとこさ吐き出した。 「……初めてなのに……」 律儀に「待て」を守り、ながーーい間おあずけ状態にあった二十九歳の男は自分の真下であせあせしているコーイチに真っ向から見惚れた。 「優しくしてやる」 「ひ……ッ!!」 「そんなに怖ぇのか」 「ち、ちがちがちがちが」 「血が? そんな乱暴にするわけねぇだろうが」 「違うッ、無駄に男前過ぎて怖いッ、正視むりッ!! 今の俺っ、汗くさいし泥くさいしお腹へったし、こんなひっどい状態でむりだってばーーー!!」 ムードなんざ皆無、ぎゃーすか騒ぐコーイチに巽は呆れて萎えるどころか……デレた。 「ちっともひどくねぇよ、コーイチ」 すべすべほっぺたに刻まれた浅い傷をれろりと舐め上げた。 ぎょっとして、まっかっかになったコーイチに、出会った頃から抱いていた想いをありのまま告げた。 「ドレスじゃなくても、泥だらけでも、てめぇは世界で一番可愛い」 そんなん、反則にも程があるよ、巽さぁぁん……。 「……巽さんも初めて?」 「その質問には黙秘する」 「ッ、このスケべッ、俺はどっちも初めてなのにッ、なんかフェアじゃないッ、ずるいッ、俺も女の子と手くらい繋ぎたい!!」 「ふざけんじゃねぇ、手を繋ぐのも話をするのも見るのも禁止だ」 「えぇぇぇえ……そしたら外歩けないじゃんか……えぇぇぇえ」 ショックに打ちひしがれているコーイチに巽は低く笑い、またキスをした。 グロスと一人の男の味しか知らない唇に割と経験を積んでいる唇が重なった。 経験は積んでいるが本気になったのは一人だけ。 この渇いた胸をあたためてくれたのも。 お妃様から命じられた通りに罪を繰り返して荒みがちだった心の拠り所になってくれたのも。 「ん、む……っ……ん……ん……っ」 自分より何倍も男らしい体にのしかかられ、クチュ、クチュ、水音の立つ甘いキスを施されてコーイチはきつく目を瞑った。 足の間に割って入っている巽と触れ合って変な気持ちに拍車がかかる。 かつてない濃厚な口づけに頭の芯がぼぉっとして、クラクラして、ところどころ編み目の解れたニットをぎゅっと掴んだ。 自然と内股になってしまう。 狩人の邪な手が太腿の間に割り込み、シャツをたくし上げ、ふにっ、大事なアソコを撫でられると背筋がゾクゾクした。 「や……やだ……巽さ……」 「お前。下着は女物なんだな」 「……男物の下着なんか、俺、持ってないもん」 らぶりーなレースつきランジェリー、色はストロベリーピンク、そのフロントをゆっくり上下に撫でられてコーイチはぶわわわわっと涙した。 「もう硬いのな」 「ふにゃっっ」 「きもちいいか?」 「は、恥ずかし、んなこといちいち聞くなぁ……」 「きもちいいか?」 答えるまで延々と問いかけてきそうな巽にコーイチは折れた。 上向きの睫毛を震わせ、自分の真上に居座る巽をおっかなびっくり見つめ、お手入れが行き届いているプルプル唇をぎこちなく動かした。 「巽さんに触られただけで……いっちゃいそぉ……です」

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