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第3話
旧温室よりの校舎に入りしばらく歩いたところで秋志は空き教室を見つけ春の手をひっぱり中へと入った。
夏の放課後、もうすぐ6時だが外はまだ明るくガランとした教室の中も明るい。
秋志は掴んでいた春の腕を離すと今度はその身体を抱き寄せた。
「――ごめん、春」
呟くと腕の中の春が困惑した顔を不安げに曇らせて秋志を見つめる。
「なにが? あの、俺こそ……ごめん」
謝り返されて秋志は首を傾げた。
「……会長に知られたから」
「ああ……。春が謝ることじゃないよ。俺が悪いんだ。……きっと、つけて来たんだろう」
生徒会室を出たときに書記たちがやってきたからそのまま一緒に仕事をするのだろうと思っていたのだ。
まさか温室に現れるとは予想外で、ため息が出る。
それほどまでにトキオは自分に―――、と思考が巡ったところで春が心配そうに話しかけてきた。
「つけてって……。秋志くん、大丈夫? あの人……えっと会長って、そのやっぱり」
言い淀む春に秋志は安心させるように微笑んだ。
学園に蔓延している自分とトキオに関する噂は春ももちろん知っている。
秋志に対するトキオの"復讐"、"恨み"、そんなキーワードが春を心配にさせているのだろう。
「大丈夫だよ」
声もことさら意識して柔らかくしたが春の表情は曇ったままだ。
「本当に? 秋志くん、会長に嫌なことされてない?」
なのに、不安の色はそのままでまっすぐに秋志を見つめ春は拳を握りしめた。
「俺だって男だし、力弱いけど……。でも秋志くんが会長になにか嫌がらせとかされたら俺が許さないから……っ! 俺も一緒に会長と戦うから!!」
次第に興奮してきたのか春は上ずった声で叫んだ。
必死なその様子は真剣に秋志の身を案じていることがわかって、つい秋志は声に出して笑ってしまった。
「……どうかした? 俺、なんか変なこと」
「嬉しくて」
焦る春の言葉を最後まで聞かずに秋志は春を抱き寄せる。
あまり筋肉もついてない薄い身体。
女と違い柔らかさも膨らみもないがそれでもこうして腕の中に捕まえているだけで欲が溢れてくる。
「ありがとう、春」
秋志が囁くと春は顔を赤くして、
「本当に……俺、秋志くんの為ならなんでもするから。だから、会長に負けないで」
秋志くんにはいつだって笑っててほしいんだ、とはにかんだ。
「わかった。本当にありがとう」
眩しいくらいに感じる春の純粋さに秋志は目を細め顔を寄せる。
温室での続きというようにふたりは唇を重ね合わせた。
春を安心させるように啄ばむような口づけを何度も落とす。
「……秋志くん……」
一層顔を赤らめた春の目が潤んで、微かな期待を宿しているのに気づき口元が緩んだ。
そっと再び唇を合わせわずかに開かれた唇から舌を滑り込ませた。
春の舌を絡めとると、おずおずと舌を動かしてくる。
出会った頃は何も知らなかった春がこうして自分のキスに応えてくれていることに喜びを感じ、欲情が溢れてくる。
放課後の空き教室。誰も来ることはないだろうが、万が一ということもある状況で春はいつになく積極的だった。
トキオのことでお互いの気持ちを強く繋ぎとめておきたいと、そう思ってくれているのだろうか。
しがみついてくる春の腕から伝わる秋志への思い。それに煽られてしまう。
密着した2人の身体の狭間で互いの欲が膨れ布越しに擦れ合った。
「……止まらなくなる」
銀糸が離れた唇を伝い、熱い吐息とともに切れる。
秋志の声は言葉通りの熱を帯びていて、硬くなった半身を春の同じようになった場所に押し付けた。
春は潤みきった眼差しで秋志を見上げてくる。
その艶やかな色欲に濡れた表情に歯止めを失ったように秋志は深いキスを落とした。
「んっ、んん」
キスしながら春の膨らんだ部分に手を這わす。
漏れてくる春の甘い声にそっとファスナーを開け、手を潜り込ませた。
「っぁ……」
すでに充分に硬くなった春の半身に触れると春の身体が小さく震えた。
熱く秋志の手の中で脈打つ春と同じように綺麗な半身。もっと感じて欲しくて乱れる姿を見たくて外へと取り出し扱きあげると、春が秋志の胸元を押してきた。
「……秋志、く、ん」
流石に校舎内ではダメだったか。
秋志が手を止めると、予想に反し春の手が秋志の下肢に触れてきた。
「……一緒に……」
恥じらいながらも、そう呟く春に秋志は口元を緩めて己の半身を同じように空気に晒す。
そして互いの半身をまとめて手にし、腰を揺らした。
「……っ、ぁ、……あっ」
熱く猛った半身同士が擦れ合い、互いの先走りが混じり合う。
お互いの硬さと熱を感じるだけでも腰が痺れるように快感に疼く。
春の手も添えられ摩擦を送ってくる。
たまらずに秋志は唇を奪い欲のまま春の口内を犯し、手の動きを早める。
くちゅくちゅと唾液の音と、先走りが擦れ合う音が響いてくる。
吐精感が競り上がり2人の息は荒さを増し、水音も激しくなる。
「……秋志く、んっ……」
息継ぎの合間に切羽詰まった春の悩ましい声が落ちてくる。
秋志は春の耳朶を食み、秘所へ触れる代わりとばかりに耳孔へ舌を這わせた。
耳が弱い春はビクビクと身体を震わせる。
「あっ、あ、っ……」
春の中へ入りたい。
そんな想いを込めて耳を舐め、甘噛みすると手に熱いものが吐き出された。
それを追いかけるように秋志は自身を高め、同じように欲を吐き出した。
2人の手に収まりきれなかった白濁が床にこぼれ落ちていく。
粘つく感触は2人を正気に戻すどころか、物足りなさを残す。
秋志はポケットからハンカチを取り出し、春と自分の手を拭うと春の耳元に唇を寄せた。
「……春の部屋、行っていい?」
俺の腕の中でだけ花開く春の淫靡な姿を見たい。
秋志は掠れた声で囁いた。
春は目を瞬かせ、上気した頬を緩めて小さくうなずいた。
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