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第4話

柔らかさはないが、喜んで秋志を迎える後孔は蠢いて秋志を締め付ける。 細い腰を掴んで突き上げるたびに秋志のみが知る可愛らしい喘ぎ声を上げる。 告白して、初めてのキスをして、ゆっくりと時間をかけて身体を繋げていった数ヶ月前。 硬い蕾はいまでは大きく綻び、嬉々として秋志を受け入れてくれる。 それが、どうしようもなくーー。 「遅い御帰宅だなぁ」 甘い余韻を断ち切る声が飛び込んできてハッと秋志は我に返った。 春の部屋から人目を忍び帰ってきた寮。 生徒会役員及び風紀委員には専用フロアが用意され、その部屋は一般生徒と区別されている。 エレベーターを降りた途端にかかった声は秋志の自室の前に立つトキオのものだった。 まるで帰りを待っていたとでもいうようにドアにもたれかかるトキオの目は楽しげに光っている。 「……」 「あの平凡とヤってきたのか?」 秋志はかけられる言葉に反応することなく歩を進める。 春と過ごしたひとときの楽しさが一気に霧散する。 舌打ちを堪えてポケットからルームカードキーを取り出す。 だがトキオがいるせいで鍵を開けることができず無言で視線を向ける。 「なぁアイツっていいのか? 平凡だけどアッチはすごいんですーとか?」 嘲りを含んだ笑いをこぼしながらトキオは目を眇め秋志の顔を覗き込んできた。 トキオの頭の中でどういう映像が思い浮かべられてるのか。 一瞬、秋志はトキオと同じように目を眇め、無表情に戻った。 「興味あるなぁ」 「……退いていただけますか。部屋に入りたいので」 感情ない声にトキオは薄笑いを浮かべたまま少しだけ身体をずらした。 鍵を開け秋志が中に入ると当たり前のようにトキオも入りドアを閉める。 「アイツ、貸せよ」 「貸す?」 眉を寄せる秋志のそばへとトキオがゆっくり歩み寄る。 「お前の"恋人"なんだろ? なら、俺も喰う権利がある、だろ?」 一層秋志は眉間に深い皺を刻み、口を開きかけた。 だがそれより早くトキオが次の言葉を紡ぐ。 「神崎春――だっけ? あいつの家、俺んとこの系列会社の下請けだったわ」 同じ身長同じ顔。髪の色は違えど、すべてが同じと言っていいくらいに似ているふたり。 秋志は自分と同じ顔をしたトキオがどうしてこうも――。 「あいつんちを路頭に迷わてみようかって言ったらどうするかな。ついでに愛しの副会長さまの御父上母上も、って言ったら自分から俺のところ来るかもなぁ?」 ニヤニヤと笑うトキオに身体が震える。 春なら、家族を盾に脅されたらどうするか。 トキオが言った通り自らその身を捧げるのは容易に想像できる。 「春に勝手なことをするな」 純粋な春。 春は可愛らしくまっさらで、そんな春の笑顔を見るのが楽しみだというのに。 無表情を崩し鋭い声を上げ秋志は冷たくトキオを見据えた。 「だーかーら、貸せつってんだろ?」 トキオは喉を鳴らしながら秋志の肩をつかみ、力任せに壁に押し付けてくる。 「なぁあのゲームしようぜ? "副会長"さまがどうやっても"会長"に勝てないゲーム」 「それは」 「来週だろ? この前終わった定期テストの発表。お前が俺より上だったら神崎は諦めてやる。だが"いつも通り"に俺が上だったらあいつを喰う。いいな?」 まるで秋志の意見など求めていない。 決定事項だと声は言っている。 「馬鹿馬鹿しい」 「なら俺のダチにあいつ襲わせてマワすか?」 マワす? 自分以外の誰か、が? 春の身体はまだ俺しか知らないのに。 想像しただけで顔が歪む。 「春は――」 「もちろんもったいないからジョーダンだよ。あんまり副会長さまが聞き分け悪いからさぁ」 目を細めトキオは唇が触れそうなほどに秋志に顔を近づけた。 「心配すんなって。俺は優しいぜ?」 なぁ、オニーチャン。 頼むぜ、とトキオは歪んだ笑いを向け秋志の唇を噛んだ。 「ッ……」 ぷつりと表面が切れ血が滲む。それを楽しげにトキオの舌が舐めとる。 秋志はどうやっても諦めそうにないトキオに目を逸らすことしかできなかった。 ***

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