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3-遡る

「阿南先生」 またか。 体育教師の阿南は壁越しにこちらを窺う一人の生徒を横目で見据えた。 「俺に付き纏うな、三里」 三里はクラスであまり目立たない、大人しい、寡黙な高校一年生だ。 十六歳には見えない華奢な体つきで色白で。 眼鏡をかけたセックス依存症男子は運動部に所属する上級生や教育実習生らと複数の性的関係をもっている。 説教する気も起こらないし、応じるつもりもない阿南は、三里を放置していた。 それをいいことに三里は半ストーカーにまでなって阿南に付き纏うようになった。 阿南が夜中に自宅アパートを出てコンビニへ向かおうとすれば背中に声をかけてくるレベルにまで増長した。 「相手はいくらでもいるんだろうが、俺に固執するな……余所へ当たれ……程々にな」 「僕、阿南先生がいいです」 何が三里の引き鉄を引いてしまったのだろう。 体育倉庫で実習生と戯れていたのを目撃し、見逃してやった、自分が三里にしてやったことはそれくらいで。 雨が降り出した。 阿南は傘を持っていなかった三里を部屋に入れてやった。 「先生、僕とセックスして?」 制服のままの三里は聞き飽きた台詞を凝りもせず阿南にぶん投げてくる。 「断る」 「一回だけ、してくれたら、僕、もう付き纏ったりしません」 「無理だ」 「じゃあ、フェラさせてください」 「嫌だ」 「じゃあ、指、しゃぶらせてください」 「……」

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