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8-体育倉庫で

「三里ぉ、ちょっといいか?」 二人の上級生に声をかけられて三里は立ち止まった。 教室では教師に質問の回答を求められる以外、滅多に言葉を発さず、協調性のなさを無駄に放出している彼。 放課後に遊ぶ友達などいない。 セックスするだけの関係なら、掃いて捨てるほど、いた。 その上級生もそういう関係上の相手だった。 中間テストが来週に迫る時期、部活動は休み期間に入り、がらんとした体育館棟。 三里はか細い腕をとられて体育倉庫まで引き擦り込まれた。 「なぁ、今テスト前で溜まってんだよね」 「一発やらせてくんない?」 ああ、そんなことだろうと思った。 そもそも、僕とこの人達の間にはそんなことしかない。 ひんやりした倉庫内、へらへら笑う上級生二人を前にして、三里はぼんやり考えた。 前の僕ならもうズボンもパンツも自分から脱いでいるはずなのに。 あまり気が乗らない。 なんでだろう。 体の底が冷えていく感じ……。 「……やだ」 「は?」 「ビッチ三里ちゃんが何言ってんの?」 びっち、確かに、僕にぴったりの言葉。 三里は怒るでも怖がるでもなく、ふふっと、笑う。 「僕、短小先パイ達の相手するの、もう嫌」 二、三発殴られて済めばいいか、そう思いながら、そう答えた。 そのとき。 閉じられていた重たい扉ががらがらと……。 「何やってるんだ、お前等」 いつぞやの登場をなぞるように、体育倉庫の番人にも等しい体育教師・阿南先生が現れたのだった。 「先生」 「なんだ」 「僕、ていそう守りましたよ」 猛ダッシュで逃げていった上級生二人を追いかけるのも億劫で、偶然現場に居合わせた阿南は、ため息を噛み殺す。 跳び箱に腰掛けて足をぶらぶらさせている小柄な三里に肩を竦めてみせた。 「お前、意味わかってるのか」 そう言って、半開きになっていたままの扉を閉めると。 抜かりなくちゃんと内側からロックした。

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