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9-パラレル番外編-あかずきんのセフレになってやる

阿南は一匹狼だ。 群れず、伴侶もつくらず、森から森へ移動を続けていた。 ある日、ふと立ち寄った緑の濃く深い森。 風もないのに次から次へ落ち葉が舞い降りてくる。 穏やかな静けさの中に紛れるはしたない音色と声。 木立の狭間で赤い服を着た少年と猟師がふしだらな逢瀬に至っていた。 着衣はそのままにズボン前だけを寛げた猟師、剥き出しになった少年の尻に腰を打ちつけている。 大木に縋りつく少年はニーハイブーツを履いた両足で地面を踏み締め、自分の肌が鳴らされる音をぼんやり聞いていた。 阿南は立ち去るつもりで回れ右をした。 足先が小枝をぽきりと踏む。 セックスに耽りながらも五感の鋭かった猟師は耳聡く些細な音を聞きつけ、少年を突き放すと猟銃をすかさず構えて発砲したものの、猟師よりも鋭い五感を持っていた阿南は弾丸をやり過ごし、自分の命を狙った男の命をあっという間に鮮やかに奪った。 口腔に入り込んだ犠牲者の血を吐き捨て、阿南は、降り積もった落ち葉の吹き溜まりでしゃがみ込んでいる少年を何気なく見下ろした。 大人しそうな少女めいた顔立ちに眼鏡。 赤い服がよく似合う。 少年の頬にも猟師の血が少量飛び散っていた。 おもむろに屈んだ阿南はその滑らかな頬を拭ってやった。 「狼さん、優しいね」 たった今目の前で猟師が殺されたというのに、少年は、三里は、阿南にふふっと笑いかけた……。 「病気のおばあさんのところへお見舞いに行く途中だったの。 でも森の中を歩いてたら、僕、疼いちゃって。 いつもそうなの。 だから前にも相手をしてくれた猟師さんを見つけて、突っ込んでもらったの。 でも猟師さん死んじゃったから。 狼さん、僕の疼き、慰めてくれる?」

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