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月曜日。 阿南が受け持つ体育の授業、三里の動きが鈍いのは緊張から来るものだけじゃなかった。 「三里」 「ッ……はい」 「具合が悪いのなら端で休んでろ」 「……はい」 体育館のステージ前で体育座りした三里は溌剌と体を動かすクラスメートの向こう、クリップボード片手に黒パーカー姿で生徒をチェックしている阿南をためらいがちに眺めた。 先輩はもうずっとメールをくれない。 廊下で顔を合わせてもすぐに視線を逸らして通り過ぎてしまう。 忘れた方がいいのかな。 こんな終わり方になるなんて考えたこともなかったけれど。 でもそれじゃあ、僕は、何のため先生に抱かれるんだろう? 『三年の××は来年受験を控えている。この時期、何か不祥事を起こせば受験に影響が出る』 僕を無視する先輩のため? それとも……。 「三里」 三里ははっとした、阿南に得点板を取ってくるよう言われ、慌ててステージ脇の倉庫へ向かう。 両開きの戸をガラガラ開いて、すぐ脇に置かれていたキャスター付きの得点板を引っ張り出そうとして、 「大丈夫か」 びっくりして振り返れば戸口のところに阿南が立っていた。 「せ、先生」 「きついなら保健室で休め」 「あ……いえ、そこまでは……」 「そうか」 阿南は踵を返すと体育館中央へ戻って行った。 入れ替わりに体育委員のクラスメートがやってきて得点板を出すのをわざわざ手伝ってくれた。 「熱あるんだろ、三里?」 「え……」 「すげー顔赤いじゃん、大丈夫?」 三里はまともな返事もできずに首を左右に振ることしかできなかった。 阿南先生はどうして。 どうして僕とあんなこと。 それはある日の放課後のこと。 「や……っここは嫌です、先生っ」 「どうして」 「ッ……」 「特別な思い入れでもあるか、ここに」 すでに部活動は終わって生徒は下校し、シンと静まり返った運動部のロッカールームに、教師と生徒の声が密やかに行き交う。 「そうだな、あの三年と一緒にいたな、お前は」 「あ……っや、だ……ッ」 「ここで抱き合って、こういう風にしてたな」 「ッん……!」 いともたやすく自由を奪われた三里は阿南にキスされた。 すぐ背後のロッカーに両手を縫い止められて喉奥まで虐げられる。 「ふぁ……っ」 先輩とこんなキスしていない。 こんな窒息しそうな、一気に逆上せて、頭の中がグチャグチャになるようなキス……知らなかった。 阿南先生が僕に教えた。 「したのか、ここで、最後まで」 「や……っやだ、嫌です……っ……」 「三里、答えろ」 顎を掴まれて視線を合わせるよう強要される。 広い背中を屈めて真っ直ぐ顔を覗き込んでくる体育教師に震える生徒は濡れた唇で告げる。 「……一度だけ」 明かりの消されたロッカールームに生徒の吐息が何度も繰り返される。 「あん……っぁぁ……っぃ、や……ッ」 壁際に沿うようにして置かれたベンチに押し倒された三里。 制服は乱れて、脱がされたスラックスと下着、押し開かれた両足。 勃起しきったペニスが尻孔に深くめり込んでは奥を突き上げて内側から肉伝いに揺さぶってくる。 挿入するなり欲望全開なピストンが始まって三里は双眸に涙を溜める。 声を押し殺そうと自分の掌を噛む。 「んーーっ……んんんっ……!」 時々、先生が怖い。 急に乱暴になって、元から口数が少ないから、何を考えているのかわからなくて。 「ッ、んっ、んっ、んっ!」 息まで止めて自分の掌に歯を立てる三里を見下ろして、阿南は、動きをふと緩めた。 じんわり涙目でパチパチ見上げてくる生徒の制服をたくし上げる。 上体を倒し、ピンと硬く張りつめていた乳首をゆっくり舐め回す。 ざらついた舌先が、ぴちゃ……と緩やかに纏わりついて、下肢に直結するこそばゆい刺激に三里の双眸はもっとじんわりした。 「先生……」 「……どこがいい、三里」 いきなり口を開いたかと思えばそんな問いかけ。 ず……ず……と三里の奥で探るようにペニスを動かしてくる。 「あ……ぁあ……っぁぁ……っ」 かつて上級生と及んだ行為を思い出す余地もない。 阿南との交わりで記憶が新たに塗り替えられていく。 年齢も体格も自分とは大差ある男に大人びた快楽を植えつけられていく。 「……この辺か」 「せんせ……ぜん、ぶ……ぜんぶきもちいい……です」 「……」 「先生が……触るところ……ン……ぜんぶ……」 露出したお腹を撫でて恥ずかしそうにしながらも三里はちゃんと答えた。 「ッッ、んンンぅ……っ」 「三里、噛むな……」 「んむっっっ」 華奢な体をびくつかせる三里に阿南は口づけた。 熱く滾るペニスも窮屈な腹の底に幾度となくキスしてくる。 三里は真上にやってきた阿南に縋りつく。 両足を体育教師の脇腹にぎゅっと絡ませて、全身で、縋った。 時々、いとしくなる、阿南先生。 僕はどうしたらいいですか? 『もっと俺と一緒にいろ……』 先生のものになってもいいですか?

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