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16-パラレル番外編-狼さんの大好物になってあげる

■獣姦要素があります/あかずきんパロ 最近、森に出没する人食い狼。 数人の女子供が犠牲に遭い、これ以上、残酷な牙の餌食となる者が出ないよう村人達は話し合い、そして。 「僕、囮になります」 身寄りのいない三里は自ら進んで危険な役目を買って出た……。 深い緑に埋め尽くされた森の狭間に際立つ赤が翻る。 三里は逃げていた。 村人の想像をはるかに超えた獰猛な黒狼に追われて森の中を一人駆けていた。 猟銃の弾丸を数発浴びても倒れることのなかった漆黒の巨躯。 囮であった三里から、茂みの奥に潜んで銃を構えていた村人達へ標的を変えようとした慈悲なき肉食獣。 三里は咄嗟に護身用のナイフを翳した。 自らの腕を切りつけ、血の匂いで狼の関心を再び引き寄せ、その場から全速力で駆け出した。 僕には誰もいないから。 家族がいるみんなより、僕の方が、いなくなってもいい存在だから。 そうして三里は白昼でも日差しが届くことのない落ち葉の吹き溜まりにて狼に追い詰められた。 血走った鋭い眼と至近距離で対峙して三里は思う。 やっぱり怖い。 イイコちゃんぶらなきゃよかったな。 なんか僕らしくなかったかも。 ただただ恐ろしい血生臭い獣に打ち倒され、のしかかられた三里は、疲労と出血と恐怖により、幸いと言うべきか、こてっと気を失った……。 三里が目を覚ますとそこは森の中ではなく隣村の外れに建つ簡素な丸太小屋のベッドの上だった。 「……起きたか」 覗き込んでいた一人の男。 短い黒髪、長身、抑揚のない乾いた声。 「……腕の傷はそこまで深くない」 そう言われて三里は自分の腕に巻かれていた包帯に気が付いた。 頭が追い付かずにぼんやりしている三里をベッドに残し、男は小屋の奥へ去ろうとした。 心持ち片足を引き摺るように。 鼻を掠める残り香を漂わせて。 「もしかして狼さん?」 三里の問いかけに彼は、阿南は、答えなかった。

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