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「ウィンターカップの決勝戦、すごくかっこよかった」
年明け最初の週末。
仕事帰りの三里と待ち合わせし、ダイニングレストランの半個室でディナーをご馳走になっていた部活帰りの阿南はちょっと目を見張らせた。
「……試合、見に来たんだ」
「直接じゃなくてテレビでね。惜敗しちゃったけど。阿南君が写る度、もう、失禁しそうなくらいムラムラして堪らなかった」
今はビジネスコートを脱いでシンプルなスーツ姿、ぱっと見は地味めだが、よーく見れば綺麗な顔立ちをしている眼鏡をかけた黒髪の三里、向かい側に座る阿南に照れくさそうに笑いかけた。
「ぶっちゃけ生中継でオカズにしちゃった」
そう、三里はこういう人だった。
たいていの物事には無関心で喜怒哀楽に疎く、しかし阿南にだけは並々ならぬ過度な愛情を注ぎ、監禁にまで手を出すようなヤバイ奴だった。
「もちろん録画させてもらったよ? 永久保存版としてDVDにもやかないと、とりあえず五枚くらい用意しようかな」
「……三里さん、デザート頼んでいい」
「好きなだけ頼んでいいよ?」
手錠つきで監禁されていた当の阿南は。
解放されて帰宅したものの再び自ら三里の元へ向かった。
『……どうかした』
『ちょっと、もれちゃった』
『……泌尿器科行ったら』
『どうして戻ってきたの?』
『……』
『僕、期待してもいい……? これからも阿南君といられるって、いっしょに甘いもの食べたり、いっぱいセックスできるって、阿南君のすっごいおちんちんに相手してもらえるって、そう思っていい?』
『……とりあえず一端部屋入ろうか、三里さん』
この人、やっぱりやばくてえろくて変な人。
三里さん。
あんたのこともっと知りたい。
「パフェ、全種類頼んでいいよ?」
そんなわけで阿南は年上リーマンの三里とお付き合いを始めた。
交際していた彼女とは別れた。
ウィンターカップでは準優勝、好成績を残したがだらだら浮かれてなどいられない、迫る新人戦に向けて日々練習に励んでいる。
「応援、必ず行くからね?」
……試合の応援に来てくれるのは別にいい。
……その場で変に興奮して変なこと始めなきゃ、歓迎するよ、三里さん?
しかしながら阿南好き好き病にかかっている三里は阿南を至近距離におくと所構わず発情する傾向にあった。
「……たっちゃった、阿南君」
……しまった、近過ぎた。
帰宅ラッシュで混み合う電車内だった。
真冬ながらも人いきれでじっとり熱気のこもる車両の隅っこ、吊り革を掴んで立っていた長身の阿南は向かい合う三里をさり気なく見下ろしてみた。
四方に人の壁が迫る中、細身の三里は何も掴まずに真正面の阿南を支えにして立っていた。
前髪越しに、チラリ、上目遣いに見つめてくる。
滑らかな頬がうっすら紅潮しているのは人いきれのせいだけではない。
混み合う車内で愛しの高校生とぎゅうぎゅう密着して成す術なく発情し、心なしか呼吸まで上擦っているような。
「阿南君……さわって……?」
むり、ありえない。
「むり」
「……いぢわる……」
意地悪とかじゃなくて、それが普通、常識、三里さん。
第一ボタンが外された学ラン、重たいスポーツバッグを背負う、周囲より頭一つ分飛び出した黒髪短髪の阿南を三里はじぃっと見つめた。
阿南君、満員電車でもかっこいい、おいしそう、食べちゃいたい。
今ここで阿南君におちんちん突っ込まれたら即イキしそう。
下手したらまたおもらししちゃうかも。
おもらしどころじゃない、潮噴きしちゃうかも。
「ん……阿南くぅん……」
三里は欲望のままに甘えるように阿南の胸にスリスリ擦り寄った。
「……三里さん、人に見られる」
「ん……阿南君のおちんちんさわっていい?」
「むり」
「僕のおちんちんめちゃくちゃさわって……?」
「しーーー」
黒く艶めくストレート髪が学ラン上をゆっくり滑る。
次の停車駅を告げるアナウンス、女子高生の笑い声、中年男性の咳払い、男子学生のイヤホンから洩れる音楽。
混然と行き交う雑音に掻き消される寸前の微かな囁きが阿南の鼓膜を震わせる。
「阿南くんがほしいって、僕の奥……ジンジン疼いてる……激しく突き上げられたいって……とろっとろになるまで種付けされたいって……」
……すごいレベルの痴漢か変態の人みたいだ、三里さん。
「……三里さん、ガマン」
「っ……じゃあ降りたら、駅のトイレで、カチコチになったおちんちん突っ込んでくれる……?」
「しーーーー」
「……くれる?」
「むり」
「っ……阿南くん、焦らしちゃ、や……阿南くんのむっつりドS……はぁはぁ……」
……しまったな、もっと興奮させたみたいだ。
「……トイレとか、そんなとこ、三里さんに負担がかかる」
何気にずっと匂いを嗅いでいた阿南の胸の上で三里はパチパチ瞬きした。
ガタン、ゴトン、単調な揺れをものともしない頼り甲斐のある男子高校生を今一度見上げた。
「どうしよう、阿南くん……」
お次は何だと身構える阿南に三里はふにゃりと笑いかけた。
「子宮できちゃいそう……」
三里さんなら想像妊娠可かもしれない。
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