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23-パラレル番外編-Mr.すとろべりぃきゃんでぃ
小学校体育教師の阿南は小さなストーカーに付き纏われている。
「三里、いい加減にしろ」
職員用トイレに入った阿南、スマホ片手に平然と後をついてきた彼に対し、返り討ちにするように立ちはだかった。
小さなストーカー三里は悪びれるでもなく怖がるでもなく、生徒があまり寄りつかない、学校一おっかない先生ポジションに位置付けられている阿南をまっすぐ見上げた。
「阿南先生の生トイレ動画撮らせてくれたらすぐ教室に戻ります」
三里は生活面においてまぁまぁ問題のある生徒だった。
同級生とまるで口をきかず、単独行動が目立ち、質問の回答や教科書の音読以外、教室でその声を聞くことは滅多にない。
来年は中学生だがその体型は一般男子の平均に至らず、発育のいい女子よりも華奢、だ。
入学してきた当初から眼鏡をかけていて、いつも俯きがち、学校行事の日はたいてい欠席している、きっとズル休みに違いない。
そんな三里がどうして自分に付き纏うのか、阿南には思い当たる節があった。
本年度に彼のクラス担任となり、最初の体育の授業のとき、三里は運動場で貧血を起こした。
阿南はそんな生徒を保健室に運んでやった。
『……おっきくて、あったかい』
三里は阿南の背中にきゅっと抱きついてきた。
それからというもの度重なる視姦の嵐、子供らしからぬ過激な言動、注意してもやめない、反省しない、毎日繰り返される日常盗撮。
思春期における一時的な性の混乱、阿南はそう思うようにして三里を放置することにした、トイレ盗撮だけは許さないが。
「先生、僕の処女、早く強奪して?」
「三里、教室に戻れ」
「先生が強奪してくれないなら、僕、ネットでハッテンバとか検索して、そこに行って、知らないおじさんに奪われて、一生涯、悔やんで生きようと思います」
「……もう予鈴が鳴ってる、平常点、大幅に減点するぞ」
「留年したら先生ともっと一緒にいられるから、別に、いいです」
「……小学校にそんな制度はない」
小学生にしては表情に欠けたお人形さんじみた顔をちらりと見下ろして阿南は懸念するのだ。
……この分だと来週の家庭訪問が思いやられるな。
そうして阿南の懸念はズバリ的中することとなる。
「……おい、三里」
「先生、紅茶にしますか、コーヒーにしますか、それとも日本茶ですか?」
「お母さんはどうした」
「ママ? ママは今日、仕事です」
やられた。
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