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27-パラレル番外編-猫に蝶々

三十一歳、独身、体育教師の阿南は現在アパート三階の角部屋で一人暮らしをしている。 高校のバスケ部顧問でもある彼はその日部活指導を終え、車で一端帰宅すると、徒歩三分のスーパーへ晩ごはんを買いに出かけた。 「ありがとうございましたぁ」 タイムセールで安くなった魚フライなどのお惣菜、牛乳、卵、食パン、杏仁豆腐を買い、スーパーのレジ袋を提げて帰っていたら。 がさがさ!! 通りがかったコンビニのダストボックスから明らかに妙な音が聞こえてきた。 日頃からあまり感情を表に出さない阿南、無表情ながらも思わず立ち止まって様子を窺っていると。 にゅっと覗いたちっちゃな……猫の手。 次にぴょこんと……仔猫ではないがオトナと呼ぶにはまだ小さな猫が投入口から顔を覗かせたではないか。 お腹が空いてひもじくてダストボックスに飛び込んでゴミを漁っていたらしい。 コンビニの店員に見つかったら確実に怒られるだろう。 パーカーにTシャツ、ジャージ下という通勤着の阿南はちらほらと人通りのある路上で人目を気にするでもなくダストボックスに両手を突っ込んだ。 「ふー!」 怒っている、明らかに怒っている、通りがかった女子高生が笑っている、それでも阿南は全く動じない。 「しゃー!」 そうして阿南は両手を傷だらけにしてダストボックスから猫を取り出すのに成功した。 懲りずにガブガブ手を噛んでくる猫を片手に抱いて片手にレジ袋を持ち、アパートに帰宅した。 「……にゃ」 初めての場所に猫はきょろきょろ、うろうろ、割と片づけられたワンルームを行ったり来たり。 ぶっちゃけきちゃなくてソファやらベッドやら、あちこちにつけられたちっちゃな足跡。 「ふー!」 まだ阿南にぜんっぜん慣れていない猫、近づいてきた体育教師を威嚇してきた。 相変らず淡々としている体育教師はふかふかタオルで縮れた毛の猫を包み込む。 ガブガブしていた猫は、その内、大人しくなった。 あたたかなタオルにすっぽり包まれてヨシヨシされていると気持ちよさそうに目を閉じて。 あっという間に傷だらけになった阿南の指をぺろぺろしてきた。 阿南はお皿に牛乳を、細かく切った魚フライを小皿にのせ、猫に食べさせた。 コンビニのダストボックスから顔を覗かせた猫を一目見た瞬間、何となく、一生お世話することを自ずと悟った阿南。 天命と言っても過言でないような。 「……三里」 阿南は猫に三里と名付けた。

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