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「あつぃ……おなかの下らへん……あつぃにゃ」 自分の腕の中で三里はあからさまに火照っていた。 すべすべな頬はすっかり紅潮しきっている。 ただ潤んでいたはずの双眸は熱を孕んでとろんとしていて。 微かに震えている半開きの唇。 猫耳もしっぽもぷるぷる揺れているような。 どくん、どくん、どくん、どくん 十代に戻ったような青臭い興奮に阿南は心も体も撃ち抜かれた。 めちゃくちゃにしてしまいたい。 無防備にも程がある三里の限界奥まで暴いて自分のものに、 「ッ」 「おててもあつぃ」 こどもじみた柔らかな両手を阿南の頬にあてがった三里はため息交じりの甘えた声で言った。 「ん……あにゃんもあったかぃ……?」 居心地のいい阿南の腕の中で頻りに喉ぐるし、しっぽを左右にゆらゆらさせて体育教師の顔をぺたぺたする。 何とも甘いぬくもりに理性が溶けそうになっている阿南は。 唇付近を行き来していたか細い指に軽く口づけて。 そっと食んでみた。 三里はとろんなまなこを大きく見開かせて自分の指を咥えた阿南を繁々と見つめた。 「にゃ、あにゃんが三里のこと、ぺろぺろするにゃ……?」 蕩けた眼差しや上擦った声に興奮が加速する。 一切怯えることなく身を任せてくるふしぎな猫耳男子に益々魅入られていく。 浅く口に含んだ指の輪郭を舌先でなぞるだけでは物足りず、顔を寄せ、紅潮して普段以上にすべすべに見える頬まで。 滑らかな首筋も、うなじも。 短いキスを落とすのと同時にゆっくり食んでいく。 「ふにゃ……くすぐったぃ……あにゃん、あにゃん……」 切なそうに笑って鳴く三里。 平均体型を上回る逞しい体格の阿南にすっぽり抱きしめられて、その唇を肌に感じる度、しっとり長い睫毛を弱々しげに震わせた。 抑えようのない、むずむず、じんじんが、もっとひどくなる。 「三里もぉ……ぺろぺろするにゃっ」 阿南の振舞に触発されて再び好き好きスキンシップに及んだ三里。 阿南が戸惑うくらいに……タガが外れたように……筋張った長い指を順々に舐めては吸い、吸っては舐め、掌から手の甲まで、はぁはぁと露骨に息を乱しながら。 夢中になる余り飛びついて阿南をベッドに押し倒した。 「発情したにゃ」 阿南の腹に乗っかって前髪をさらりと流し、少々呆気にとられている体育教師をズレた眼鏡越しにまっすぐ見下ろした。 「まだオトナじゃにゃいのに……あにゃんのせいにゃ」 夕日は果てて宵闇が広がり出した外、暗くなりゆく部屋、安心するベッドの上。 だぼだぼの長袖シャツ越しに自分のおなかを両手でなでなでして。 猫耳がシュン……と垂れた三里は阿南に言う。 「おなかのなかで……ちょうちょ、飛んでるにゃ」 「……蝶々?」 「いっぱい……ちょうちょ……あばれてるにゃ」 教師の阿南はある英語の慣用句を思い出した。 I have butterflies in my stomach. 不安や緊張、そして、胸の高鳴りを意味する言葉だ……。 「ちょうちょ……いっぱい……」

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