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28-キスの誓い
日曜日の朝。
十時を過ぎてもまだベッドで寝ていた阿南は緩やかに寝返りを打った。
「……」
すぐ隣にあるはずの温もりがないことに違和感を覚えて目覚めを誘われる。
睡眠中に鈍っていた五感もはたらき出し、聴覚に物音を捉えた阿南、速やかに眠りから脱してのそりと身を起こした。
半分開かれたカーテン、明るい日の光が床に広がり、ほのかに温もったフローリング。
短く切られた髪を大きな手で一撫でしてベッドから日だまりへ足を下ろす。
下にはスウェット、上半身は裸、カーテンを全開にすれば見栄えよく備わった適度な筋肉が柔らかな日差しを一身に浴びた。
一瞬、眩しげに片目だけ細め、裸足の足でぺたぺたとフローリングを踏み鳴らして物音のする方へ向かう。
「あ、先生、おはようございます」
土曜の夜に泊まりにやってきた三里が流しの前に立って朝食の準備をしていた。
初めてのことだ。
いつもならば自分よりも寝続けて後から起きるというのに。
「朝ごはん、作ってます。まずかったらごめんなさい」
土日でも制服を着用している三里は昨日も同じく制服姿で阿南宅にやってきた。
今現在の格好はと言うと。
「先生のセーター、借りました」
さらさら髪は前下がり気味、眼鏡、サイズの合わない阿南のざっくりセーターを素肌に纏って下は剥き出し生足、今日は少し暖かいとは言え寒そうだ。
スクランブルエッグを調理中の三里はフライパンに視線を落としたまま、起床してまだ一言も発していない阿南に言葉を続ける。
「いつも先生に作ってもらったり、買ってもらったりしてるから。甘え過ぎかと思って作ってるんですけど。材料は先生持ちですけど」
今にも片方の肩が露出しそうなサイズ大のセーターを着、生足で、不慣れな手つきで朝ごはんを作っている三里。
正直、クル。
土曜の夜から本日未明にかけて溺愛し合ったはずが、目覚め一番に新たな昂ぶりを覚えてしまう。
それに今日は。
「……あ、先生」
阿南は朝ごはんを準備中の三里を背中から抱きしめた。
小柄で華奢な生徒は体育教師の懐にいとも容易くすっぽりおさまって、抜群の抱き心地だ。
阿南に無言で抱きしめられた三里は今にも喉をごろごろ鳴らしそうな様子でぐるりと阿南を見上げた。
「朝ごはんより先に朝えっち、しますか?」
筋張った両腕にうっとり身を預けた三里は好き好き大好き阿南先生に自らも擦り寄る。
腕の中で体の向きを変えると胸板にすーりすーり頬擦りしてきた。
「先生、あったかい」
頬擦りしつつ片足を脇腹に積極的に絡め、主に下半身を擦りつけてくる。
教室では始終うつむきがちな顔を上げ、上目遣いに阿南を愛しげにじっと見つめてくる。
一先ずコンロの火を止めた阿南は三里の細腰に回していた両手をさらに下へ移動させた。
セーターの内側へもぞりと潜り込ませ、掌に触れた肌身の感触に、前回の裸エプロンと同様また下着を履いていないのかと思った。
だけど今日、三里はちゃんと下着を履いていた。
「……お前、これ、どういう構造だ」
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