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「ごちそうさまでした」 阿南に巻いてもらった手巻き寿司を食べ終えた三里。 三里の倍は食べた阿南。 時刻は夜七時前、早めの夕食を済ませて後片付けし、ドラッグストアの次に寄った洋菓子店で購入したシュークリームを食べた。 「先生、はんぶんこ、してください」 「……俺とお前の、同じだが」 「先生の、半分、食べたいです」 生徒の我侭をきいてやる体育教師、まるで意味のないはんぶんこをし、完食、コーヒーも飲み干した。 「僕、洗いま、」 「いい、俺がやる」 食後のおやつの後片付けも手早く終えた阿南。 時刻は七時を過ぎたところで外は薄暗い。 まだ制服に着替えずに自分のセーターを着、生足でいる三里の元へ、阿南は大股で戻った。 それはそれは小さな箱を携えて。 「お前にやる、三里」 テーブルに置くのではなく、直接手渡しされて、三里はキョトン顔で受け取った。 可愛らしく巻かれたリボン。 明らかにプレゼントだ。 「僕、今日誕生日じゃないです、阿南先生」 「誕生日じゃなくてもお前に今日やりたかったから買った、それだけの話だ」 さらにキョトン顔を深めた三里は膝上にちょこんと置いた箱のリボンをか細い指先で解いた。 ぱかり、蓋を開ける。 中に入っていたのは指輪だった。 シンプルなシルバーリング。 何気に三里の誕生石が施されている。 「お前にやる、三里」 明後日の方向を向いた阿南は同じ言葉を繰り返した。

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