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阿南はのそりと身を起こして口元を拭うと、連続した雄雌絶頂に薄い胸を大きく上下させ、今にも息絶えそうになっている被食者じみた有り様に成り果てた三里を覗き込んだ。 「三里」 「はーーーーーっ……はーーーっ……はぁっ……せんせぇ……抱っこ……」 こどもみたいにそう言って両腕を伸ばしてきたので、身を屈めてやれば、ぎゅっと抱きついてきた。 「……あったかい……」 背中に手を添え、あぐらをかいて膝上で抱き直すと、三里は阿南の胸板に頬擦りしてこれでもかと甘えてきた。 「阿南先生……もっと先生のこと知りたいです……もっともっともっともっと、教えてください」 「……ああ」 「僕のこと……もっと、いっぱい、とろとろのとろとろにして……?」 「……乳首を噛むな、三里」 阿南は記憶を辿る、確か一昨年に購入した分が残っていたはずだと、ベッド脇に置いてある引き出し付きサイドテーブルに目をやった。 「ゴムいりません」 目ざとい三里の言葉に阿南は首を左右に振る。 「いらないです、僕、妊娠しません。そういう体なんです」 どっちつかずなんです。 「……」 カチャリと眼鏡をかけ直した三里は、自分とは比べ物にならない、三十一歳現役体育教師の縋り甲斐ある体に乙女みたいにしなだれかかった。 「……それでも必要だろ」 「いらない、僕、阿南先生のこと、ちょくで感じたいです」 「……」 「先生の熱い息遣い、ちゃんと、ここで感じたいの」 阿南の利き手を掴んで自分の腹の上へ導く。 「あ……まだ赤い」 文化祭の最中、怒りのままに男を殴った体育教師の手の甲はまだ多少の腫れを残していた。 「痛かったですよね、ごめんなさい」 虚脱して記憶にはなかったが、自分を守るためにできたものだろうと察していた三里は、包帯塗れの両手を添えて太く浮き出た関節にキスをした。 「……それは俺の台詞だ」 「ううん。阿南先生、僕のこと守ってくれました。ありがとうございます」 「……それも俺の台詞だ」 阿南は再び三里をベッドに仰向けにした。 「阿南先生、早く来て」 「……ああ」 「阿南先生のすっごいおちんちんで僕のこと処女にしてください」 「……おかしいだろ、それは」 絶えず揺らめく華奢な両足の狭間でものものしげに波打つ厚い腰。 蜜孔に途中まで突き立てられた教師ペニス。 青筋を走らせ、怒張して、うねり蠢く肉壺の狂おしい締めつけにより一層逞しく膨れ上がっていく。 「っ……ほんと……処女になっちゃぅ……僕の雌穴ぁ……処女に戻っちゃぅ……っ」 止め処ない愛液を絡ませて蜜孔を行き来する阿南に三里は咽び悦んだ。 さらさらな黒髪を乱し、レンズの下で双眸をとろんと蕩けさせ、ずれたパーカーから頼りない肩を片方露出させて。 生徒ペニスをぷるぷる震わせ、瑞々しい肌身全体を紅潮させ、真上で律動する阿南をひたすら見つめた。 「せんせぇ……ぜんぶっ……僕にぜんぶ挿入れて……? 阿南せんせぇ、ほしぃ……もっといっしょになりたぃ……」 阿南は、ギリ、と奥歯を噛み締めた。 もっていかれそうな肉圧の中心に教師ペニスをさらに突き進めていく。 居ても立ってもいられずに胎底で雄々しく剛直を反り返らせる。 生徒の三里と鼓動を分かち合う。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……っ」 「ッ……は、ぁ……」 「せんせ……あにゃん、せんせ……僕のなかで、ビクビクって……僕のおなか、突き破りそぉ……」 「……そんなことはしない」 悩ましげに身を捩じらせる三里に向かって阿南は上体を倒した。 色味の増した乳首を狙い違わず唇に捕らえる。 やんわり歯を立て、甘く感じられるツンと上向く突起をたちまちびしょ濡れにする。 隈なく熱く潤う膣奥を大きく突かれながら乳首を細やかに刺激されて三里は貧弱な喉を反り返らせた。 「ゃぁぁぁっっ……おっぱい感じちゃぅ……僕ぅ……女の子になっちゃぅ……」 早熟な蜜孔をじっくり突き上げ、膨れゆく乳首を執拗に甘やかし、二人の狭間で跳ね上がっていた生徒ペニスを阿南は掌に抱いた。 「ぁっっっ?」 「……男のお前、射精したそうにしてる、三里」 「ぁっぁっ、ぁっ、っ、したぃっ、射精したぃっ、精子だしたぃっ……あにゃんせんせぇ……せんせぇも射精()して……? 僕のおなか、せんせぇの精子で、とろっとろにしてくださぃ……先生でいっぱいにしてぇ……」 「ッ……お前、本当……」 ピストンが加速した。 肉の窄まりにめり込んだ教師ペニスが膣奥を一頻り連打した。 「……ッ」 絶頂の間際に我を忘れかけた阿南は三里の両手に両手を重ねようとし、包帯に滲む血が視界に入って、一瞬、動きを止めた。 頭がまっしろになりそうな快感に心身を酔わせながらも三里は教師の逡巡を嗅ぎ取った。 僅かな痛みなど簡単に打ち負かす阿南への恋心に従って、節くれ立つ長い指に細い指を自分から絡ませた。 「阿南先生、好き……」 躊躇を振り払って、阿南も、三里の手を握り返した。 かけがけのない唇に何度目かもわからないキスを捧げた……。 「初めて悲しく思いました」 深夜の静寂に三里の声がポツンと落ちた。 彼の包帯を巻き直していた半裸の阿南は聞き返さずに黙々と作業に集中する。 だぼだぼなパーカーのファスナーをきっちり上げて、阿南のお古のぱんつを履いた三里は、淡々と続けた。 「阿南先生のこどもが産めたらよかったです」 阿南は返事をしなかった。 代わりに、新しい包帯を巻き終えるとベッドに座らせていた三里をお膝に抱っこした。 「……来週、秋祭り、行くか」 「あきまつり」 「……少し遠いがな」 「あれ。先生、お祭りとか好きなんですか? 人ゴミとか苦手かと思ってました」 さらさらな黒髪を胸板に滑らせて人懐っこい猫のように無表情でゴロゴロしてくる三里に、阿南は、告げた。 「お前と行ってみたいと思った」 「うん」 「来年の文化祭。一緒に回ってみるか」 「うん」 「再来年も」 「うん。うん。その次の年も」 「……もう卒業してるだろ」 「あ。そっか。じゃあその次の年の秋祭りも」 「……ああ。二人で一緒に」 お前がいればそれで十分だ、そこまで明確には言えなかった三十路体育教師。 しょうがない、阿南先生はそういう性格なのだ。

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