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家に帰ると、豪華ではないがそれなりの食事が食卓に用意してあった。
「おかえり、高幸くん」
「ただいま、花実さん」
キッチンに女性が立っていた。
この女性の名は、花実さん。
花実さんは父の再婚相手だ。
ボクが中学二年生の時に父と結婚した。
アルコールに溺れてばかりだった父は、花実さんと再婚した途端に酒を辞めて真面目に働くようになった。
ボクや妹に暴言を吐き、暴力を振るう事はぱったりとなくなった。
今思えば父は母が死んで寂しかったのかもしれない。
どうしようもない寂しさを酒で紛らわせていたのかもしれない。
その寂しさを、今は花実さんが埋めてくれているんだ。
「今日はシチューにしたのよ」
「ありがとうございます、楽しみだなぁ」
花実さんはよく働く人だった。
昔はボクがやっていた家事を、今は全部花実さんがしてくれている。
花実さんは良い人だ。
良い人だ。良い人だ。良い人だ。良い人だ……。
――でも……ボクは…………
――ボクは、花実さんが嫌いだ。
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