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――光の家から引き上げて、自分の家に帰る。
玄関を開けた途端にカレーの匂いが漂ってくる。
今夜はカレーなんだ。
ボクは自分の家が嫌いだ。
妹はもう幼いと言うほど子供ではなくなってしまって、ボクの世話を必要としない。
父は日中は仕事で、夜にほんの少し顔を会わせるだけだ。
昔のようにボクや妹に暴力を振るう事はなくなった。
家の事は全部花実さんがやってくれる。
この家には、ボクのやる事が何もないんだ。
昔はあれだけ忙しかったのに、今はとても暇なんだ。
ボクはそれを何故だか凄く不安に思ってしまう。
――家族の世話をする事だけが、自分の存在理由だった。
それなのに、今はどうだ?
この家にボクの仕事はもうない。
ボクの役目は終わったんだ。
親戚や近所の人達に『かわいそう』だと言われる事はなくなった。
だけどその代わり『いつも偉いのね』と褒められる事もなくなってしまった。
それがどうしようもなく悲しくて、不安になる。
ああ、気が狂いそうだ。
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