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ボクは女を無視して自室へ籠る。 制服のままベッドに倒れるように横になって、目を瞑った。 なんだかどっと疲れてしまった。 今日はもうこのまま寝てしまおう。 ――………… ――……夢を見た。 昔の夢だった。 ボクがまだ父親に暴力を振るわれていた頃の夢。 「酒買って来い!!」 酔っぱらった父は幼いボクにそう怒鳴った。 毎晩の事だった。 それがボクの日常だった。 ボクは言われた通りにコンビニに行くが、当然子供のボクに酒を売って貰えるわけがなかった。 家に帰って父に『買えませんでした』と言うと父は怒り狂いボクを殴った。 「買い物もできねぇのかこの役立たず!」 「使えねぇヤツ!存在価値のねぇガキが!!」 「お前なんか産まれて来なけりゃ良かったんだ!!」 これもいつもの事。 ボクの日常。 物どころ付いた時からボクは既にこんな状況に置かれていた。 これがボクの普通だったんだ。 学校はそれなりに楽しかった。 ボクはいつも下級生や、クラスでちょっと浮いているような子の世話を焼いていた。 先生のお手伝いもたくさんした。 そうすると友達も先生も、たくさん、たくさん、ボクを褒めてくれたから。 家では相変わらず暴力を振るわれていたけれど、学校に居る間はその事を忘れられた。 学校には光も居た。 光は小さい頃から内向的で人見知りで、友達が上手く作れなかった。 そんな光をボクはいつも気に掛けて、優しくしてあげて……。 人づきあいが苦手な光もボクにだけは心を開くから、ボクはそれが嬉しくて、 光にはボクが付いててあげないとダメだ。 この子はボクが面倒を見てあげなくちゃダメなんだ。 ……そう、思っていた。 今でもずっと、そう思っている。 ――コンコン ドアをノックする音が聞こえた。 まだ眠い目を擦り、無理やり上体を起こす。 着替えずに眠ったから、制服が少し皺になってしまっていた。 「高幸くん?起きてる?」 「……なんですか?」 朝からこの女の声を聞かなきゃならないなんて、嫌な目覚めだ。 「入っていい?」 「いいですけど……」 「あの、ね、落ち着いて聞いてね」 「はい?」 「丹下さん家に救急車が停まってて……息子さんが運ばれたって」 「……え?」 「高幸くん、丹下さん家の子と仲良かったのよね?」 「…………ひか、る…………」

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