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Ⅱ:4

「…なに勝手なこと言ってるの? 君たちを相手にする時、俺、ちゃんと約束したよねぇ? 君たちとはパートナーになるつもりはない、それでも良いならプレイしてあげるって。それを了承したのは君たちじゃないの? ねぇ、どうなの?」 「……あ…ぁ…」  怒りを露わにした清宮の目を間近で見た男は、遂に言葉が言葉として成り立たなくなった。 「まさかとは思うけど、そんな理由で伊沢くんを勝手にこんな所に連れ出して、暴力ふるったって言うの? この〝俺の〟パートナーだと知ってて?」  この場を支配していた清宮のプレッシャーが、全て男ひとりに向いた。それと同時に男の躰が可哀想なほどガクガクと震えだす。 「よぉぉく、分かった。それが君たちの出した答えってことだね」 「ち、ちが…」 「良いよ。最後だし相手、してあげる」  ―――Kneel  地の底から這いずって出たような声だった。押したわけじゃない。殴ったわけでもない。何もされていないはずなのに、あっという間に男は地面に崩れ落ち清宮の前に降参した。  初めて見る服従の格好だった。正座したまま背中を後ろに倒したような、そんな格好。 「相変わらずソレが好きなんだ? 気持ち悪いね、お前。お望み通り踏んでやるよ」 「ひぃ"い"っ!!」  男の様子は明らかにおかしかった。望んでいた相手からの仕置きのはずなのに、男の目には恐怖しか浮かんでいない。もしも男がいま、清宮によってswitchされているのだとしたら、Subに切り替わっているのだとしたら。男は、きっとこんな目をしたりしない。 「な、なぁ清宮…そいつ、」  もしかして、switchできてないんじゃ…? そう口にしようとして、止めた。清宮の口元が、酷く楽しそうに弧を描いたから。 「伊沢くん、ちょぉっと待っててねぇ? 君へのお仕置きは、後でちゃんとしてあげるから」 「えっ、」  言われた言葉を正しく認識するよりも早く、その場に男の叫び声が響き渡った。清宮の足は、男の股間を力任せに踏み躙っていた。そこに手加減は見られない。 「これが好きなんだろう? なぁ? 沢山やるから勝手に感じてろ」 「ぃあ"あ"ぁぁ"ッ!」 「アッハッハ! そんなに気持ち良いかぁ!?」 「ぁあ"あっ! あひぃ"ぃ"ぃッ!!」  どう考えても快楽なんて拾えていない声だった。目だって殆んど白一色の状態で、口からは唾液と悲鳴が永遠に溢れ出している。  switchをかけられていなければ、Domにとって痛みは単なる痛みでしかない。その上Glareを使われているのだとしたら、その痛みや恐怖は何倍にも膨れ上がる。まさに、拷問だった。 「きっ、きよみ……それ」  やっぱswitch、かかってないだろ…。思わず漏らした言葉を清宮は耳聡く拾い上げた。 「かかってないんじゃないよ、かけてないんだ。かけるわけないでしょう? 俺とこいつはプレイをしてる訳じゃない。俺は今このDomに、パートナーに手を出された報復をしているんだから」  漸くこちらを振り向いた清宮の顔は、見たこともないほど歪に、笑んでいた。

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