28 / 47

Ⅳ:5

「俺も一応Domなんだけどさ、ほら、清宮くんって有名人だろ? そんな彼の今のパートナーがどんなのかちょっと知りたくてさ」 「今の…?」 「〝今の〟だよ。だって彼のパートナー、しょっちゅう変わるだろ? 相手がDomなのも珍しくないし。ただ今回は首輪を貰ってるって言うからどんなのか気になってさ」  大学も違うのにわざわざ来たんだよ、と笑う男に苛立った。他の奴とは違って、この男には俺の存在がめちゃくちゃ軽いものに見えるらしい。 「おい、俺は清宮のパートナーじゃなくて恋人なんだよ」 「え、恋人ぉ?」 「そうだよ」 「でもさぁ、それ今までの子達もみんな言ってたよ? 恋人だなんて思うの、やめた方が良いと思うなぁ」 「はぁ…?」  カチンときて箸を握り締める。 「俺が嘘ついてるって言うのかよ」 「いや、そうは言わないけどさぁ」 「じゃあなんだよ!」  ドンッ、と机を叩くと目の前の男は両手の平を俺に向けた。 「まぁまぁ、そんな怒んないでよ。君の為を思って言ってるんだし」 「だから何がッ!」 「だって君、清宮くんの戦歴知ってる? それこそ百戦錬磨、遊ばれて捨てられた人間なんて腐る程いる。その殆どがみんな凄い美人だったよ。そんな美人にさえ本気にならない彼が、今回だけは本気だっていう証拠、どこにあんの?」 「な…」 「何だったら、清宮くんと関係を持ったことのある相手の写真見てみる? 俺も同じクラブ通ってたから、大体の奴らを知ってるよ」  清宮の、今までの相手…? 俺の喉が引き攣った。 「あ、これこれ。コレはクラブのイベントで撮ったやつだけど、こん中だけでもコレとコレとコレと、あとコレと…」  男が差し出したスマホに浮かぶ、派手な容姿の女と…男。俺とは真逆な世界を生きてそうなそいつらは、みな清宮にべったりとくっついて笑っている。 「あ、そうだこの子。この子が今まで一番長く相手してたんじゃないかな」  何枚か見せた最後に男が出した写真は、綺麗で清楚な見た目をした、男のものだった。 「俺的にはこの子が清宮くんの本命だと思ってて、そのうち復縁するんじゃないかって噂も出てるんだよ」 「こいつが」 「そう、男にしとくのは勿体無いような美人でしょう?」  俺も一回くらい相手してほしいなぁ、なんていう男を置いて立ち上がる。 「お前、これ片付けとけ」 「えっ、ちょ!?」  まだ少しうどんが残ったお盆を男に押し付けると、俺はそのまま講義をすっ飛ばして大学を後にした。

ともだちにシェアしよう!