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Ⅳ:5
「俺も一応Domなんだけどさ、ほら、清宮くんって有名人だろ? そんな彼の今のパートナーがどんなのかちょっと知りたくてさ」
「今の…?」
「〝今の〟だよ。だって彼のパートナー、しょっちゅう変わるだろ? 相手がDomなのも珍しくないし。ただ今回は首輪を貰ってるって言うからどんなのか気になってさ」
大学も違うのにわざわざ来たんだよ、と笑う男に苛立った。他の奴とは違って、この男には俺の存在がめちゃくちゃ軽いものに見えるらしい。
「おい、俺は清宮のパートナーじゃなくて恋人なんだよ」
「え、恋人ぉ?」
「そうだよ」
「でもさぁ、それ今までの子達もみんな言ってたよ? 恋人だなんて思うの、やめた方が良いと思うなぁ」
「はぁ…?」
カチンときて箸を握り締める。
「俺が嘘ついてるって言うのかよ」
「いや、そうは言わないけどさぁ」
「じゃあなんだよ!」
ドンッ、と机を叩くと目の前の男は両手の平を俺に向けた。
「まぁまぁ、そんな怒んないでよ。君の為を思って言ってるんだし」
「だから何がッ!」
「だって君、清宮くんの戦歴知ってる? それこそ百戦錬磨、遊ばれて捨てられた人間なんて腐る程いる。その殆どがみんな凄い美人だったよ。そんな美人にさえ本気にならない彼が、今回だけは本気だっていう証拠、どこにあんの?」
「な…」
「何だったら、清宮くんと関係を持ったことのある相手の写真見てみる? 俺も同じクラブ通ってたから、大体の奴らを知ってるよ」
清宮の、今までの相手…? 俺の喉が引き攣った。
「あ、これこれ。コレはクラブのイベントで撮ったやつだけど、こん中だけでもコレとコレとコレと、あとコレと…」
男が差し出したスマホに浮かぶ、派手な容姿の女と…男。俺とは真逆な世界を生きてそうなそいつらは、みな清宮にべったりとくっついて笑っている。
「あ、そうだこの子。この子が今まで一番長く相手してたんじゃないかな」
何枚か見せた最後に男が出した写真は、綺麗で清楚な見た目をした、男のものだった。
「俺的にはこの子が清宮くんの本命だと思ってて、そのうち復縁するんじゃないかって噂も出てるんだよ」
「こいつが」
「そう、男にしとくのは勿体無いような美人でしょう?」
俺も一回くらい相手してほしいなぁ、なんていう男を置いて立ち上がる。
「お前、これ片付けとけ」
「えっ、ちょ!?」
まだ少しうどんが残ったお盆を男に押し付けると、俺はそのまま講義をすっ飛ばして大学を後にした。
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