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Ⅳ:8

◇  アイツの家に行かなければ、俺の部屋まで迎えに来るだろうか。そう考えていた俺はきっと甘すぎた。大学の外に、見覚えのある車が一台止まっている。それを見て引き返そうとした足も虚しく、どこからともなく現れた清宮によって俺の躰はあっと言う間に車内へと押し込まれた。  道中、ずっと無言の美形でチャラ男な運転手。どう見たって怒っているその様子に、段々と俺も腹がたってきた。何で俺がキレられなきゃいけないんだ?  だから家に着くまでずっと俺も無言を貫き、ひたすら流れる景色を見ていた。 「あのさ、こういうのやめようよ」 「どういうの」  部屋に入って早々、玄関先で清宮が話を切り出した。俺はまだ、靴を脱ぎかけだっていうのに。 「俺を避けるのだよ。部屋の掃除だって嘘なんでしょ? 気に入らないことがあるのは分かってるけど、避けられたら話し合いにならないよ」 「話したくないから避けてんだろ」  漸く脱ぎ終えた靴を投げ捨てる。俺の前に立ちふさがる清宮を無理矢理押し退けてリビングへ足を向ければ、慌てたように清宮も俺の後を追ってきた。 「話さなきゃ何も解決しないでしょ?」 「解決なんてすんのかよ? お前、過去を変えられんの?」 「あの野郎…」  清宮は、隠すことなく大きく舌打ちをした。どうやら例の男が来たことを清宮も知っているようだ。 「お前の周りってお節介な奴ばっかだよな。頼んでもいねぇのに、胸焼けするほど色んな奴の写真見せてくれたぜ」 「……ごめん、でもそんなの気にすることないから」 「そんなの?」  俺の頬が引き攣る。 「すげぇな、あの人数相手にしてきて〝そんなの〟で済ませられんだ。やっぱ経験豊富なチャラ男は言うことが違うな」 「伊沢くん…」 「触んなよ汚ぇな!」  伸ばされた手を振り払えば、想像以上に大きな音がリビングに響いた。弾かれた手に驚いたのか、清宮は一瞬だけ瞠目し、やがてぐしゃりと顔を歪めた。

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