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Ⅳ:14
「べ…別に、今日だけじゃ…」
「どういうこと?」
「だからっ、別に今日だけじゃなくて! 昨日も一昨日も、その前だって洗ってた! 大体、迎えに来んのが遅ぇんだよ! 三日間も放置しやがって!」
清宮が目を瞠る。
「…俺の為に洗って、用意してたの? この三日間、毎日…?」
「他に誰の為にやるっつーんだよボケ! 直ぐに連行しにくると思ったのに、お前ちっとも来ねぇから!」
そこまで言ってから、〝しまった〟と思った。完全なる失言だ。恐る恐る逸らしていた目を清宮に戻せば、矢張りそこには、悪魔のような笑みを浮かべる奴がいて…。
「お仕置きの為に、用意してたんだ…?」
「い、嫌だ!」
「俺、まだ何も言ってないよ」
「言わなくても分かる! お前、今変なこと企んでんだろッ!」
叫んで目の前の男を突き飛ばし、俺は逃げた。ヤバイと思った。ここでコイツから逃げなければ、今度こそ本当にいろんな意味で死ぬかもしれない。だけどその躰は直ぐに清宮に捕まって、引き戻され床に押し倒された。
再び対峙した清宮の目は普通じゃなかった。それは、どう見たって捕食者の目で…。
「やだっ、嫌だ!」
「伊沢くんのイヤは、して欲しいのイヤ」
「今は本気のイヤだっつーの!」
「ダメ。自分からあんな可愛いおねだりしておいて、今更無しにはできないよ」
清宮が、捕まえた俺の手首を強く握った。
「お仕置き、始めようか…伊沢くん」
あ、と思った時にはもう、遅かった。低く艶やかな声が、耳朶をくすぐり脳へと命令を伝達する。
「―――Kneel」
「ぁ…あ……うぅ」
全身から力が抜ける。頭の中がグルグル回って、視界はぐにゃりと世界を歪めた。絶対君主の命令から快楽を得ようと、躰が準備を始める。
自分の中が、造り替えられていく…。
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