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3-ゴーゴーバレンタインデー

「ねー北見、ヨリ戻そ」 「メグ」 「コウ君は元タチ、つまりネコちゃんとしてはマグロでしょ」 「そうだな」 ひでぇ。 「俺の方がなーん倍もよくしてあげる自信、あるよ?」 北見さんの肩にするりと纏わりつくメグっちの両腕。 メグっちのえろい腰に絡みつく北見さんの両腕。 そのまま二人はえろえろなキスを……。 「……」 ちゅんちゅん雀が鳴いている。 アパートのワンルームにて、ふざけた悪夢から目が覚めた航也はしばし天井を睨み続けるのだった。 もうすぐバレンタインデーだ。 用事があって大学から近いショッピングモールに来てみれば洋菓子店ではフェアの真っ最中、有名店が集う特設コーナーもあって、いつにもまして楽しげに群がる女子女子女子。 バレンタインデーか。 北見さん、もらったら嬉しいモンなのかな。 二十八歳の年上バーテンダーと交際中の男子大学生は、女子による物色が途切れていたコーナーへ何とはなしに立ち寄り、かわいい箱にトリュフがつまった商品をひょいっと手にとってみた。 あんな夢見るなんて末期だな。 そりゃあマグロかもしんねぇけど。 メグっちのテクは確かにすごかったけど。 今朝方の悪夢が脳裏に蘇って航也はついぼんやりしていた。 はたと我に返ればチョコを物色していたはずの女子一同がポツネン男子をチラチラと気にしていた。 航也は慌てて商品を戻すと回れ右して特設コーナーから大股で立ち去った。 あほらし、ばからし。 男が男にチョコ? そんなん聞いたことねーよ。 そもそも似合わねー。 ぜんっぜん似合わねー。 あの人のことだ、俺がチョコなんか渡したら絶対「ぶはっ」ってなるに決まってる、んで「涙止まんない」って肩震わせながら言うんだよ、普段は大人っぽくクールにしてっけどツボ入ったら「ぶはっ」なんだよ、しかもそのツボ、俺の勘違いとか失敗ばっか……それがなんか……むかつくけど……素の北見さんが見れた気がして……嬉しいっつーか。 やっぱ一コ買ってみっかな。

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