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「……ふわぁ……」 その日、航也は北見宅のベッドで目が覚めた。 昨夜はお泊まり、夜更かしを強いられたために現在時刻は正午寸前、開かれたカーテンの向こうは明るい日射しに満ち満ちていた。 「んーー……」 寝返りついでに背伸びしていたら、すでに隣から起床し、バーカウンターでホットコーヒーを飲んでいた北見が振り返った。 「おはよ」 「……はよ……」 声を出し、その掠れ具合と、この照れくさいシチュエーションに航也はやたら恥ずかしくなって頭から布団に包まった。 今日は古着屋の仕事が休み、夕方前からダイニングバーに出勤予定の北見は現在シンプルな部屋着姿で、今日一日を始める準備がしっかり出来上がっていた。 航也は目覚めたばかり、一日のスタート地点、髪はボサボサ、寒かったから服は着て眠りについたものの、なんかぐちゃぐちゃ。 「何か食べる? コーヒー飲む?」 「……水がいい、です」 「なんで敬語」 常温のミネラルウォーターを手にして立ち上がった北見は小さく笑う。 一重の細長い眼、短髪黒髪、長身。 そこにバーテンダーというオプションがつく、さもおもてになりそうな大人男子。 裸足でフローリングをぺたぺた言わせて布団がこんもり盛り上がったベッドへ歩み寄った。 「……どーも、です」 まだふやけた眼差しでいる航也が布団から顔を覗かせると端っこに腰掛け、ペットボトルを手渡した。 「何か食べたいモンある?」 「うーん……腹へったけど……うーん……」 「俺が決めてい?」 「あ、うん……」 まだ寝惚け眼の航也はゴクゴク水を飲んだ。 この間食ったの、うまかったなー、じゃがいもとバジルのパスタ……ジェノベーゼだっけ。 でもアボガドのっけたトーストもうまかったなー。 何作ってくれっかなー。 「ハイ」 え、もうできたのかよ? まだ水をゴクゴクしていた航也は北見に差し出されたソレを見て目を丸くした。 焦げ茶のリボンが巻かれた長方形のブラウン色の箱。

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