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ハッピーな気持ちは見事に木っ端微塵、あの恵弥を頼って信じ込んでしまった甘い自分に航也は「あーあ」とため息をついた。 「北見さん、悪ぃ」 「うん?」 「メグっちに……あ、なんでもねぇ……」 そこで北見はピーンときた。 「そういうこと」 さっきまでの上機嫌そうな顔色はどこへやら、バーカウンターで項垂れて負のオーラを垂れ流している航也に北見は思わず笑みを零した。 二人分のコーヒーを淹れて黒のスツールに座ると、どんよりじめじめしている航也に言う。 「何でこんな勢揃いって、正直びっくりした。でも嬉しかったよ」 「何で……キノコ苦手なんだろ」 「苦手。でもその辺余裕で上回る喜びはある」 俺のために作ってくれた、それだけでも十分なのに。 こっそり俺の好きなものリサーチしてくれたんだろ。 「頼った相手が不味かったけどな」 「……あーあ」 結局のところ北見にまるっと知られて航也はカウンターに突っ伏し、またため息を。 「らしくねーことしたから失敗した」 もぞりと少しだけ頭をずらして片目と泣き黒子を外気に覗かせ、航也は、隣で片頬杖を突いて自分を見下ろしている北見をちらりと見上げた。 「……北見さん、俺にらしくねーことばっかさせる……」 なにこのコすげーかわいい。 「? ……今、何か言ったか?」 答える代わりに北見は屈んで泣き黒子に軽くキスした。 急な振舞にびっくりした航也はまるで針ネズミみたいに丸まった……ではなく、完全にうつ伏せて泣き黒子を隠してしまった。 そんな様がまた北見を煽る。 現在時刻を確認してみれば三時過ぎ。 バーテンとして勤務する店の出勤時刻は約二時間後だ。 「うーん」 完全にうつ伏せていた航也はまたもぞもぞと顔を覗かせ、スマホ片手に唸る北見をこっそり見上げた。 「航也、今日ウチ泊まる?」 「は? だって、土曜って深夜二時まで仕事だろ?」 「泊まる?」 「あのなー北見さん、それまで一人で何してろって、」 「帰ってきたらシようよ」 「……は?」 「朝まで」 このスケベ、とまっかになった顔をまたまた隠して航也はこっそり吐き捨てた。

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