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五時からの勤務時刻に合わせて北見はアパートを出て行った。 一人残された航也。 夕食を買うため一端近所のコンビニへ出向き、戻って、テレビを見たりパソコンをいじったり、好きに使っていいと言われた小規模ホームバーでバーテンの下手な真似事をしてみたり。 どれもあまり集中できなかった。 帰ってきたら、え、速攻……? するのか……? ま、まぁ深夜の二時過ぎだし、まだまだ時間あんだけど。 泊まるつもりじゃなかったから替えのぱんつ持ってきてねー。 さっきコンビニで買えばよかったかな、でももったいねーか。 北見さんに借りるか? いーや、服ならいーけどぱんつは嫌だな。 よし、買ってこよ。 「ありがとうございましたー」 宵から夜に移りゆく時間帯、コンビニを後にした航也はほんの一瞬だけ立ち尽くした。 なんだこれ。 初めて男んちにお泊まりする女子か、俺。 お泊まりの経験は何度だってある。 北見宅にも宿泊経験済だ。 しかし今日の航也は妙に浮ついていた。 北見の〈朝まで宣言〉を殊の外意識しているのかもしれない。 はぁ、とりあえず風呂入っとくか。 零時前にお風呂は済ませておいた。 上はそのまま、下は北見のざっくり部屋着を借りて、ぱんつだけ新品。 それだけだと寒いので真っ先に目についたルームカーディガンを羽織った。 はぁ、あと何すっかな。 あと二時間ちょっとかな、まだ長ぇな。 ちょっと寝とくか? もちろん航也は一睡だってできなかった。 「あ」 長く重く感じられた二時間ちょっとは、やがて過ぎた。 玄関先でがちゃがちゃとロックを外す音がし、ベッドで時間を持て余していた航也はぎこちなく起き上がる。 「ただいま」 酒やタバコといった店の残り香を纏って北見が帰ってきた。 一重の細長い眼、短髪黒髪長身によく似合う、モノトーンでシンプルながらも視線を惹きつけるいつだってブレない洗練こだわりコーデ。 「お、おかえり」 え、すんの? これ速攻すんの? もうすんの? 「風呂入ったんだ」 「えっ……うん、だってもう二時過ぎだろ、フツーだろ」 どうしているのが正解なのかと次の行動に迷う航也に、気候的にまだ手離せないアウターを脱いだ北見は平然と尋ねた。 「俺とセックスするから?」 航也が座り込むベッドの端に腰かけ、ちょこっとだけお酒を飲んで程よく火照っていた頬に片手をあてがった。 「つめてぇ」 「ポケットで温めておいたんだけど。意味なかったか」 「北見さん」 「ごめん、俺、シャワー浴びる余裕ない」 最後の台詞は早口で片づけて、北見は、利き手で顎を僅かに持ち上げると航也にキスした。

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