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5-カレはやっぱりケツフェチ

恋愛は落とすことが愉しみで関係が出来上がってしまえば後は心が離れていく一方だった。 「イイ?」 「あっあんっイイ……ッ北見ぃ……」 「この辺か」 「あっそこっそこぉ……ッイイ……ッッ」 セックスは相手を従属させること。 身も心も奥まで支配すること。 傲慢な価値観ながらも相手には不自由しなかった。 「また店長と喧嘩したのか、メグ」 「まーね」 「よく辞めさせられないのな」 「店で一番指名とってるし。オーナーのお気に入りだもん、俺」 「ふぅん」 「ところでさ、北見、ちょっと連帯保証人になってくんない?」 いわくつき物件を引き当てることしばしばだったが。 そんな俺はあいつに出会った。 「あんた、メグっちの元カレか何か?」 泣き黒子とケツが印象的だった水村航也に。 若者が客層を占めるカフェやら服屋やら雑貨屋が点在する裏通り。 その一つにフリーターの北見はバイト勤務している。 夜にバーテンとして入っている店から正社員として働かないかと誘いを受け、近々、長年続けてきたこちらの仕事を退職する予定だった。 最初は趣味が高じて自宅にホームバーを設置し、個人的に楽しんだり知人のイベントで酒を作っていたのが、バーテンの短期バイトを重ねて経験を積み、前回の店から今の店を紹介してもらって正規雇用というステップに至りつつある。 ちゃんと資格をとっていつか店を出すのも面白いかもしれない。 二十八歳の北見、将来と向かい合いつつ、のらりくらり接客していたら。 「北見さん」 航也が店にやってきた。 初めてのことだ。 「航也」 「お疲れ」 「なんで来たの」 「来ちゃ悪いのかよ」 雑居ビルの一階、配管剥き出し、コンクリート打ちっぱなしのひんやりしたフロア。 ウィメンズ・メンズの境はなく、雑貨やレコードなどもざっくり陳列されている。 大学帰りの航也はぐるりと中を見渡しながら北見に言う。 「近々辞めんだろ? だからその前に一回くらい来とこうかと思って」 なんてまぁ律儀なコなのか。 「せっかくだから何か買う?」 「金ない」 アクセサリーを適当に物色している航也に北見が差し出したのはニットカーディガンだった。 「これとか似合う」 「どーかな」 航也は肩を竦めた、しかしトートバッグをヴィンテージチェアに下ろすと着ていたジャケットを素直に脱ごうとした。 さり気なく背後に回った北見が脱がせてやると、肩越しにチラリと見「スミマセン」と何故か急に他人行儀に。 この切替ってわざと? わざと突き放し感出して実は弄んでる? いや、わざとじゃないからこそ、こんなにも。

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