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6-合コンのツケ
「私をイメージして作ってくれませんか?」
何度か同じオーダーを受けたことがあるバーテンダーは卒がなく材料を選んでシェイカーを振り、カウンターにつく女性客のコースターに華奢なカクテルグラスを差し出した。
「わぁ。おいしい」
満足した女性客はそれからもう一杯誕生月のカクテルを注文し、小一時間ほどバーテン相手に会話を楽しみ、フライデー・ナイトのカフェバーを去って行った。
「イメージって、どんな?」
「うん?」
カウンターの端っこに座ってノンアルコールカクテルをちびちび飲んでいた航也が問いかければ。
一重の細長い眼、短髪黒髪、長身の北見は恋人にだけ届くよう小声で答える。
「イメージっていうか、基本、カルアエスプレッソマティーニ出しとけば大体満足してもらえる」
「ひでぇ」
数分後、航也の前にタンブラーグラスが置かれた。
「これ。航也のイメージ」
オレンジがかった爽やかな色味、無造作にカットされた氷、添えられたライムスライス。
薄暗い間接照明の元、キラキラしているカクテルを前にして航也は呟いた。
「なんかガキっぽくね?」
「味はガキっぽくないと思う」
「……へぇ」
ウォッカがベースでフルーティーな味わい。
一口飲んだら濃い甘めの味が舌の上に広がった。
「酔いそ」
味はガキっぽくない?
なんかそれってえろいな、北見さん?
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