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7-ゴーゴーハロウィン
ハロウィンが迫る週半ば、航也はバーテンダーをしている北見にその日店に来ないかと誘われた。
「仮装して来たらファーストドリンク半額になるから」
「仮装って、コスプレ? めんどくさ」
「いつもの席とっとくから。おいで」
「一人で仮装すんのかよ? 淋しくね?」
「じゃあ友達も連れてきたら」
やたら北見に仮装して店に来いと誘われ、頑なに断るのも悪い気がして「じゃあ、ちょっと顔出す程度なら」と返事をした。
以前、急に欠員が出たとかで渋々参加した合コンの幹事に声をかけてみたら「面白そ、行く!」と即OKをもらい、さて、じゃあどんな仮装にするかと参考書片手に図書館の隅っこで話し合い。
「で、仮装、どーするよ」
「男の仮装といえば囚人服じゃないっ?」
「え、そーなのか?」
「王道じゃないっ?」
「へーーー……」
囚人服か、まぁ妥当なところ……なんだろーか、変にゴテゴテすんのもめんどくせーし、張りきり過ぎんのもガラじゃねーし。
そんなこんなでハロウィンの夜。
北見が働いているカフェバーはSNSで通知していた「仮装していたらファーストドリンク半額」というサービスにつられて普段の週末以上に賑わっていた。
普段はジーンズにシャツだったりと、こざっぱりしたきれいめカジュアルの格好をしている二十八歳の北見。
今日はオーナーに「ハロウィン意識した感じで」と注文を受けていたが、ごてごてコスプレ仮装は性に合わず、フォーマルベストにネクタイ、ブラックのダメージデニム、サングラスという抜け感コーデで出勤した。
だがしかし。
腕組みしたオーナーに「それじゃあハロウィンじゃないから。これ着てね」と衣装一式を手渡された。
さすがにこれは辞退できないと北見は休憩室で仕方なく着替えてみた。
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