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北見は目の前で過激なコスチュームの酔っ払いデビルに恋人の唇を奪われた腹いせを恋人自身に思う存分ぶつけた。 「お前って隙だらけだよね」 それでも気持ちが治まらずに。 舌先で掻き回したばかりの口内に親指を突っ込んで改めて掻き回したりなんかした。 「ほんとはさ、すぐにこうしてやりたかった。お前にはっきりついた派手な口紅、俺自身で落としてやりたかった」 唇奥を立て続けに弄ばれて航也はもう涙目だ。 カウンターの白スツールから崩れ落ちそうになって、両手の親指を口腔に深く突き入れてきた北見の腕を全力で掴み、年上の恋人を睨もうとした。 「ほんとに舌入れられてないの」 確かに怒るか。 俺が北見さんの立場だったら、うん、怒ってんな。 客のイメージに合わせて酒つくるって、それだけでも嫌だったし。 「ひ……ひぇらぇへなひ」 舌をなぞっていた指が唾液の糸をぷらんとぶら下げて引き抜かれ、航也は赤面した。 真顔の北見に唾液塗れの指で上下の唇を左右になぞられたり、頬にぬるぬる塗りつけられると、針ネズミみたい縮こまった。 「入れられてないって……顔によだれすり込むな」 「航也、そのコスプレ似合ってる」 「え、あ……どーも……北見さんだって」 「何の仮装に見える?」 「え……? 外国の警官……だろ?」 悪夢なる出来事に独占欲を掻き立てられた北見は欲望剥き出しの笑みを浮かべた。 「お前の大事なトコぐちゃぐちゃにして取り調べてあげようか」 睨む代わりにタチが悪そうな獣性の微笑みを添えて航也を見据えた。 北見の両腕を掴んだままでいた航也はまだ怒っている彼に……答える。 「いーよ……」 自分の唾液で濡れそぼった長い指にぎこちなく唇を押し当て、ぺろっと一舐めし、伏し目がちに流し目となって小さく呟いた。 「北見さんになら、俺の大事なトコ……ぐちゃぐちゃに取り調べられても、いい」

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