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もちろん北見は危ういくらい軽々しい恵弥のお願いを却下、自分が提供するのは寝床だけだときっぱり撥ねつけた。
そして恵弥が法律事務所へ無料相談に出向いてから四日が経過した、生温い夕暮れ刻。
「メグっち、アパートの周り行ってみたけどそれっぽい人、いなかった」
自ら偵察に行って確認し、航也が報告すれば、北見宅の床に寝転がってスマホでつまらなさそうに求人情報をチェックしていた恵弥は気怠げに問いかけた。
「意地悪そうなリーマンっぽいの、ウロウロしてなかった?」
「ウロウロしてないって。ほら、ちゃんと自分ちに帰ろ。で、仕事見つけないと。人生やり直さないと」
床でだらだらしていた恵弥を起き上がらせ、勝手に着ていた北見の服を脱がせ、洗濯済みの彼の服を着せる。
「コウ君、オカンみたい。こんなに面倒見いいコだったっけ?」
「頑張ってね、メグっち。応援してるから」
「じゃあ応援がてら帰りの運賃ちょーだい」
航也が五百円硬貨を差し出せば恵弥はウキウキと受け取った。
「惚れ直しちゃいそ」
航也の頬にちゅっとキスした春の嵐は北見宅を軽やかに今やっと一過したのだった。
「ただいま」
「おかえり、北見さん」
「あ。メグ、もしかして」
「帰ったよ」
深夜にカフェバーから帰宅した北見は航也に出迎えられ、ここ数日床でゴロゴロしていた恵弥もやっと帰宅したと知り、一息ついた。
「やっと臓器くれだの売るだの聞かずに済む」
ちょっとばっかしストレスを抱えていた北見は記念の一杯でもつくって航也と飲もうかと、カウンターの内側へ回ろうとした。
「北見さん」
北見の背中に航也は抱きついた。
夜型の男がその身に引き摺る酒やらタバコの匂いに顔を埋め、慣れない行為で真っ赤になった頬を隠し、もごもごと呟いた。
「ちょっと、今、かなり、シたい、かも」
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