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第3話

「ところでユキ、明日はカズも花音も来るぞ。お前の誕生日祝いにな」 「も、もういいってそんなの」 「誕生日?」  あろうことか、伊織は今ここで初めて、ユキの誕生日を知った。 昨年は付き合い始めたばかりで、まだそんなに好きでもなくて、気が回らなかった。  明日って! なんの用意もしてない。 何かあげたい。でも何をあげればいいかわからない、時間もない。  伊織の誕生日には、ライブで歌ってくれた。でも自分にはそんな才能もなければ、おしゃれなユキにプレゼントを選んであげられるセンスもない。 本当に自分には、何もない。 一気にいろんなことが頭を巡り、焦りだした。 「おーい、プレゼントとか無理に買わなくていいぞー」 見透かしたようにユキが言う。 「だから黙ってたんだよ…」 なんでバラすんだ、と言いたげに舌打ちする。  でも、好きな人の誕生日を知らないままなんてイヤだ。 と思ったが、口にはできない伊織なのである。

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