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第5話
「あれ、高杉くん。休憩?」
副支配人だ。長身にメガネの優男、といった風貌である。
「はい。お疲れ様です」
ぺこりと頭を下げると、副支配人は優しい笑顔になって
「お昼何食べるの?よかったら一緒にどう?」
「あの、それより…」
この辺りで買い物ができるショッピングモールのようなところはないか、と尋ねてみた。
あるにはあるが、一番近くて車で20分ほどかかるらしい。
リゾートホテルなのだから、周りに何もないことなど当然と言えば当然だ。
「何か買いたいものがあるのなら、車出してあげるけど」
背に腹はかえられない。お言葉に甘えた。
「なんだかすごく切羽詰まってるようだったから。何を買うの?」
「ユキ、さんの誕生日、明日って知らなくて、何も用意してなかったから…」
「そうなんだ。友達の誕生日に律儀だね。あ、ユキ坊ちゃんは怖い先輩なのかな?」
副支配人はアハハ、と軽く笑っているが、伊織は答えに困る。学校では怖い人で通っているが、自分には決してそうではない。
「ホテルのショップでネタになりそうなお土産物とかではダメだったんだ?」
「…というか、今もまだ、何を選べばいいのか全然わからないんです。ユキ…さんはおしゃれでセンスもいいけど、僕はそういうの全然だし」
車まで出させておきながらすみません、と謝る伊織を見て、副支配人は目を細めた。
「そうやって一生懸命、相手のことを思いながらあれこれ悩むのがプレゼントの本当の意味じゃないかな。ユキ坊ちゃんのこと、大切に思ってくださってありがとうございます」
なぜだか、胸がきゅっと締め付けられたような気がした。
ちゃんと、ユキのこと大切に思えてるんだ。
ショッピングモールに着くと、20分後に車に戻って来るように、と副支配人は言った。
往復の時間を考えると20分がリミットだ。僕はここでお昼を食べておくよ、と笑って言った。
伊織はお礼を言い、走り出した。
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