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第6話

 20分後。 正確には21分後。 汗だくで肩で息をしながら、伊織が車に戻ってきた。 「すみませんっ、遅くなってっ」 食料品フロアで買った弁当をすっかり完食し終えていた副支配人はにっこり笑った。 「プレゼントは買えた?」 「…一応」 納得いかない様子の伊織を見てまた笑う。 「何を選んでも、そんな顔になるもんだよ。ユキ坊ちゃんの反応を見るまでは、これでよかったのか?の答えはわからないさ」  どうにか休憩時間終了までにホテルに戻れた。 「あの、本当にありがとうございました!助かりました」 改めて礼を言う伊織に、副支配人はにこやかに返す。 「私は楽しかったよ、君とプチデート気分を味わえたからね。ほんとはちょっとイタズラでもしてやろうかと思ったけど、君のユキ坊ちゃんへの気持ちがあんまりにも一途過ぎるからやめとくよ」 にんまりウィンクしているが、どこまで本当なんだろう。 「プレゼント、喜んでくれるといいね」 「はい!それであの」 おずおずと小さな袋を差し出した。 「僕に?」 「お礼です。では戻ります」 走り去る間際の伊織は、少し照れたように見えた。 「何してくれてんの…せっかくガマンしてんのに」 途方に暮れ、頭を掻きながら副支配人はつぶやいた。  包みを開くと、タイピン。今つけているのを見てのチョイスなんだろう。 「お礼にしちゃブツが大げさすぎるだろ…しかも、どこがセンスないんだよ」 店員に選んでもらったのかもしれない。だが年齢に合った、接客業の邪魔にならない、シンプルで上品なデザイン。 ただ単に車を出してもらったお礼には、確かに高価すぎて不釣り合いだ。  そういうところも、センスとはまた違った点で少しズレているのだろう。  時間がない中、ユキのプレゼント選びに必死で余裕のない中、自分にまでプレゼントを贈ってくれた。  正直、不要なプレゼントだ。 せっかく大人の余裕で、ユキ坊ちゃんのために、ぐっと堪えたのに。

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