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第7話
夜になると、ユキの家族がホテルにやってきた。
ユキの父はユキとよく似ていて、大柄でハッキリとした顔立ち。
母親は正反対の、細面でふんわりとした面立ちの、着物がよく似合いそうな和風美人だった。
兄の和成はその母親にそっくりで、物腰も柔らかく優しそうな雰囲気で…
「うっわー!この人超カッコいいね!」
「これ花音!なんですかはしたない」
母に叱られた花音と呼ばれた少女は、これまたユキとユキの父の系統の、目鼻立ちがハッキリとした美少女。真っ黒で艶やかなストレートのロングヘアで、前髪は眉上でぱつんと切りそろえられている。ユキの妹だ。
花音が言ったこの人とは、言うまでもなく伊織のこと。
「久しぶりに会った第一声がそれかよ、兄に挨拶はねえのか」
花音を軽く小突くユキ。えへへ、と笑う花音。
「お帰り、ユキ。そちらは?」
次いで和成が声をかける。
「後輩の高杉。実家に帰らないって言うから連れてきた」
「はじめまして、高杉伊織です」
「はじめまして、ユキの兄の和成です。なんでも昨日逆ナンされ放題だったとか」
和成が気の毒そうに笑う。
「でもわかるわ!」
と言ったのは花音と、ユキの母まで。
「ユキ兄の妹の花音です!ユキ兄にこんなカッコいい後輩いたんだね!仲良くしようね!」
完全に目がハート。やれやれとユキはため息をつく。
「ほんっとにお前は天然魔性だな」
「?」
伊織は何を言われたのかわからず、目が合ったユキにただニコッと返した。
その夜は柘植家プラス伊織で会食が開かれ、和やかな時を過ごした。
家族からのプレゼントに埋もれ、ユキは恥ずかしそうだった。
折り合い、全然悪くないじゃないか。
伊織は複雑な心境。
家族と相容れない、孤独な者同士だと思っていたのに、という気持ちと、自分もこんな家族のもとに生まれていたら…という気持ちが混ざり合って、なんとも言えない気分だった。
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