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第10話

 和成は成績優秀品行方正スポーツ万能、両親自慢の息子だ。 現在も国立大学に通っている。  長男ということもあり、両親の期待は幼い頃からそれはそれは大きく、会社を継ぐため、柘植の家を担う者として、時に大事に、時に厳しく育てられたのだった。  さらに待望の女児・花音が誕生し、花音を蝶よ花よと愛でるのにも忙しくなり、どうしてもユキは放置気味になってしまった。  それはユキが、放っておいても大丈夫な子だったから、でもある。 放っておいても何でもそこそこ器用にこなし、世話のかからない子だった。 また放置への不満も特に漏らさず、おとなしくひとり遊びしている子どもであった。  両親はそんなユキに甘えてしまっていた。そのツケが回ってきたのはユキが小学校高学年になった頃。問題行動が増え、たびたび学校から呼び出されるように。  具体的には、学校を抜け出したり、授業をサボって屋上や体育館の倉庫にいたり、である。  家にいても、ふらりと家を出てどこへいったかわからなくなることもたびたびあった。 その度家族総動員で捜索にあたり、見つかった後はこっぴどく叱られるのであった。 そんなことを繰り返しているうちに、素行の良くない上級生に目をつけられ、睨まれ、後につるむようになる。  素直で愛くるしい兄と妹をもっと見てやりたいのに、ユキが面倒を起こすたびにその後始末をしなければならないことに、両親は疲弊していき、また正直うんざりしていた。  そして中学校からは現在の全寮制の学校に放り込まれた、というわけである。

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