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第12話

「兄貴も大変なんだな」 それだけ言うのが精一杯のユキに、和成は静かに言い返す。 「そうだよ。努力もしないでそこそこ何でもできて、体格にも恵まれてて度胸もある、そんなお前が好き勝手なことしてるのにな…」 「…」 「俺は自由に恋愛すらできないんだよ?こないだ結婚相手が決まったよ。もちろん家同士のさ。相手の顔も見たことないよ。それなのにお前はいいよね、どこまでも自由で」 それまでうなだれていたユキがハッと顔を上げる。 「高杉くんとただならぬ仲なのは、隠してるつもりなの?バレバレだよ」  結婚相手を勝手に決められて落ち込んでいたところへ、お前たちを見てしまって今まで抱えていたものをどうにも抑えられなくなった、と、少し時間を置いた後和成は謝った。 「父さんたちは、多分、お前に継がせたいと思ってるよ。今からでも戻ってこないか」 「いや、遠慮しとく…今更だ」 ユキも重い気持ちになって持ち場に戻った。  兄にそんな風に思われていたとは。  兄にそんな苦悩があったとは。 自分のことばかりで、周りのことが全然見えていなかった、と反省するが、小学生だった当時のこと、当然といえば当然だ。

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