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第16話

 シャワーを終えた2人はTシャツにトランクスという格好で、例のビアグラスで麦茶を飲む。 「ところでこれ、いつの間に買ったんだ?誕生日知ったの、こっち来てからだろ」  ドキッ。 副支配人と2人で出かけたことを話したら、ユキは怒るだろうか。 「買い物できる場所がわからなくて困ってたら、副支配人が車を出してくれて、それでショッピングモールまで…」 ユキの目がかっと見開いた。 「佐倉?!佐倉の車に乗ったぁ?!なんもされなかったか?!」 「えっ?」 「あいつは男色家だ、それも美少年好きの」  あの時言ってたこと、全部ほんとだったんだー! 微笑む伊織の額から血の気が引き、たらりと汗が流れた。 「全然!なんっにもされてないよ、親身になって相談に乗ってくれて、ユキ坊ちゃんのこと大切にしてくださってありがとうって言われた。すごく嬉しかったんだ、ユキのこと、大切に思えてるんだって気付けたっていうか」 「…ならいいけど」 いいけど、と言いながら、あまり良くないご様子。 「どうしたの?怒ったの?」 向かい合っていた伊織が隣にやって来て腕を引く。  その様子が可愛くて、つい意地悪したくなってしまった。 そんなに怒ってない、ただのちっぽけなヤキモチを焼いているだけなのだけど。 ユキは黙ってそのままそっぽを向き続ける。 「そりゃユキ以外の人とこっそり出かけたら嫌だよね、ごめんね、ユキ」 「…」 「…」  伊織は俯いて黙り込んでしまった。 そろそろ許してやらなきゃな、と思ったとき。 「ごめんなさい、どうすれば許してくれる?ねぇユキ、お願い、こっち向いてよ…」 大粒の涙をこぼしながら伊織がぐいぐい腕を引いてくる。  つまらない意地で、最愛の人を泣かせてしまったことを、ユキはひどく後悔した。 「すまねえ、怒ってなんかいねえから。もう泣くなよ」

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