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第23話

 また同じように、背中にぴったりとくっつく。 「でも僕は、誰から何言われても、ユキしか要らないんだよ…?」 目を閉じて、ユキの背中に頬を寄せながら言う。 「わかってる、お前は何も悪くねえ。誰にでも愛想振りまいたり気のあるそぶり見せたり、そんなことしてねえのはわかってる、んだけど」 ユキの唇に、体を起こし身を乗り出した伊織の唇が重なる。 「もっと、信用して」 どうにも辛そうな伊織の笑顔に、ユキは愛しさや嬉しさ、恥ずかしさ、そして情けなさや申し訳なさで涙が出そうになった。  そっと口づけを返し、伊織の上に覆い被さるような姿勢になり、さらに深く唇を重ねる。」食むようないつもの、貪るキス… 「って!」 ユキが飛び退いた。 「ごめんも言えない嫉妬深いオオカミさんにはお仕置きだよ!今日はこれ以上しないからね」 ぷいと伊織は背を向けてしまった。ユキの唇からは血が滲んでいる。 「ユキが勝手に怒ってたせいで、どれだけ辛かったと思ってんの…」 「…悪かった、すまねえ。どうしたら許してくれる?」 「うんと、甘えさせてくれる?今日、寂しかった分」 「で、何でお前から佐倉の匂いがするワケ?」 うんと甘やかしてやり、それなりに伊織の機嫌が直った頃、ユキは気になっていたことを切り出した。  伊織は一瞬ギクっとしたのが顔に出たが、洗いざらい夜の散歩でのことを話した。 男たちに誘われるまま車に乗りそうだったこと、そこに佐倉が現れ男たちを追い払った後、説教されたこと。 「…ったく、お前はちょっと目ェ離したらこれかよ」 「そうだよ、だから目離さないでよ。ひとりにしないでよ、ユキ」

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