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第16話 酔いどれの告白6

(なごみ語り) 状況がよく飲み込めず、大野君が僕の上にいる事を受け入れるまで時間が掛かった。 「大野君……起きてる?」 「…………起きてます」 間接照明のお陰で表情がはっきりと見えた。大野君は半分寝ているようだけど、寝ぼけているようにも思える。おまけに酷く酒臭かった。 「重いから、退いてくれないかな」 「………………」 …………聞こえてるくせに、微動だにしない。 布団の上からホールドされていて身動きが取れず、身体が大きな大野君に乗られたら僕は動けなかった。よってされるがままになり、ものすごく近距離に彼の顔がある。 「なごみさん……」 「へぇ、なに?」 「あの……ずっと憧れてました」 「それは……どうも、ありがとう」 この体制で言われることじゃないと、心の中の僕がツッコミを入れた。 「大野君、すごく酔ってるよね」 「酔ってるけど、酔ってません。ずっとなごみさんに憧れてて、話せるだけでうれしくて、でも苦しくて、だから佐々木さんとうまくいかなくて、この気持ちがよく分からないんです」 話の内容が支離滅裂で、意味がよく分からない。酔っ払いだけど、真面目な彼の表情から嘘は感じ取れなかった。 「俺……どうしていいのか分かりません。なごみさんと一緒にいたいんです。さっきまでは凄く楽しくて幸せでした」 「………………」 何と言葉を返していいのだろうか。 いきなりの大野君の告白に言葉が浮かばない。酔っ払いの言うことだし、まともに受けちゃいけないと、自分の中の何かが囁いた。 「大野君、とりあえず落ちつこうよ」 やっとのことで手だけ布団の外に出すことができたので、大野君のほっぺたを両手で包むと、目がいつもと違う熱を含んだように見えることに気が付いた。それは酔いのせいなのか、違う理由があるのか分からなかった。 「落ちつけません。俺はずっとこうしたかった」 ほっぺたに添えていた手をガッと押さえつけられ、大野君の顔が近付いていた。 嫌なら顔を背ければいいのに僕は避けなかった。 唇が重なる。 久しぶりのキスは酷く酒臭かった。

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