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第17話 酔いどれの告白7

(なごみ語り) 久しぶりのキスはムードとかいうものは全くなく、組み敷かれた下でただ大野君にされるがままだった。 歯が当たって舌がにゅるっと入ってくるし、大野君の方が口が大きいから完全に塞がれて、鼻で息をするにも、上に乗られてるから苦しいことこの上なかった。 く、苦しい。 もう、解放してくれないかな。 酔っ払いのおふざけにしては度が過ぎている。 キスが終わっても大野君は退いてくれなかった。じっと虚ろな目で僕を見てくる。 「大野君……重いからどいてって、本当に勘弁して。いい加減にしないと怒るよ」 僕が強く言うと、しぶしぶ上から退いた。一瞬で体が軽くなり、僕は布団を蹴って起き上がる。 ベッドの隣で、しゅんとして正座をしている大野君はやっぱり犬みたいだった。叱られた大型犬は項垂れていた。 「大野君。もし僕に言いたいことがあるなら、素面で聞くから。酔っぱらいは嫌いだ」 「はい……すみません」 「シャワー浴びる?僕のでよければ着替えも貸すよ」 「はい…………」 僕の持っている中でサイズの大きいスウェットと、買い置きしていた下着を大野君に渡した。それでも大野君には小さいかもしれかいが、しょうがない。 「ほら、シャワーを浴びて頭をすっきりさせておいで」 無理やり背中を押して、彼を浴室へ連れて行った。はぁ。手がかかる。やりたいことをやって怒られて無言になるのは、子供と同じだ。 大野君の言ってたことは、気にしないことにした。第一、彼はノンケで僕とは違う。 僕にキスしたくなるほど人恋しかったのかな。 相手が僕だったから何事もなく終わったけど、普通の男だったら思いっきり軽蔑されて殴られるだろう。翌週の仕事にも差し支えて、変な噂まで流される可能性だってある。 気にしない、気にしない。手のかかる後輩の戯言だ。 「あの……シャワーありがとうございました。」 少しして、大野君が出てきた。髪の毛がきちんと拭けてないみたいで、水滴がポタポタと垂れている。 「大野君、ここに座って。もう、髪の毛が濡れてるよ」 僕はソファに座って、前に大野君を座らせる。ドライヤーで髪を丁寧に乾かした。 「きちんと拭かないと風邪をひくじゃないか」 諒からも渉君からも世話をやかれる側だったから、人の髪を乾かす行為は新鮮だった。 「あのー、なごみさん」 大野君がふいに振り返る。 「さっきはすみませんでした。その……」 「もういいよ。気にしてないから、前向いて」 僕は気にしていない風にひらひらと手を顔の横で振った。大野君は何か言いたそうな顔をしていたが、再び座り直す。無機質なドライヤー音が夜中の部屋に響いていた。 やっぱり僕の貸した服は小さかったらしく、彼が着るとちんちくりんで手足が短く可笑しかった。

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