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第18話 酔いどれの告白8
(なごみ語り)
それから、僕はベッドで、大野君はソファで横になったが、当然のことながら目が冴えて眠れない。
寝返りを打っては転がり……を繰り返していた。
暫くして喉が渇いたので、飲み物を取りに立った。キッチンの椅子に腰かけて、水を飲む。
夜明けはまだ先のようで、濃紺の室内からは、カーテン越しに僅かに入り込んだ街灯が揺れて見えた。暗い部屋の中、男二人で何やってんだろうと情けなくてなってくる。
「ねえ、大野君。起きてる?」
水を持ったままリビングに移動し、ソファの下にしゃがみこんだ。大野君は寝てるようで動かない。
大野君の胸が規則正しく上下しているのが、ぐっすり眠っていることを物語っていた。
「さっき言ってたことは、どこまで本当なのかな。冗談で済まされないこともあるんだよ。ワンコくん……」
と、文句みたいに小さく呟いてみた。
本当は、全部嘘だと言って欲しかった。僕がホモっぽいから揶揄ってみただけですと、笑って済ませて欲しかった。だけど、大野君はその回答を選択しないのも、僕には分かっていた。
大野君は冗談で同性にキスする人ではない。悩みに悩んで衝動的にしてしまった苦しみが、キス越しに伝わってきたのだ。僕が別れた恋人に初めて気持ちを伝えた時を思い出す。今言わないと、二度と機会がない。焦りと苦しみが自らを追い詰めるのだ。
僕は、最愛の人からはもう愛されない。
一人ぼっちになって、心底孤独で寂しい日々を送っている。もう自分には生きてる価値すら無いのではと思い、涙ばかり流している。
だけど、本当は誰かに愛されたくて、こんな僕でも愛してほしくて、孤独から逃げたくて必死にもがいていた。愛する人に捨てられたどうしようもない僕だけど、必要としてくれる人はいるんだよと自分に言い聞かせたかった。
誰か、僕を愛してほしい…………
僕は、狡い人間だ。
大野君からの好意を自分の存在意義のために引き出そうとしている。気持ちに応えることができないのに、自己満足のため、大野君を使おうとしてる。
だから、大野君が寝ててよかった。
狡い自分を封印して、彼の髪を撫でた。
ところが、寝ているはずの大野君がいきなり起き上がり、僕の腕を掴んだのだ。
「ひぇっ、うわぁっ……起きて……たの?」
確かにさっきまで寝ていたのに、いつから意識があったのか、目には生気が戻っている。
「酔いもほとんど覚めたんで、今なら言えます。俺、なごみさんにたぶん恋してます。あなたの側に居たいです」
驚きで、開いた口が塞がらなかった。
恋するなんて言葉を久々に聞いた気がして、甘酸っぱさが胸に広がった。
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