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第19話 酔いどれの告白9
(大野語り)
俺の必死の告白は、酔っているからと言われ二度も流された。二度も流されたから、立ち直れないくらい落ち込んで、深い穴にしばらく入っていたい気分になる。カッコ悪すぎる……俺は恥ずかしさで死んでしまいたくなった。
男が男に告白するのは、どんなに勇気がいることか、なごみさんは分かっていない。気持ち悪いと非難された方がよっぽど楽だ。勢いで襲ったキスだって、拒絶されなかった。
本当は二度もする気はなかったのだ。寝たふりをしていたら、なごみさんが側に来て小声で何かを囁いてから俺の髪を撫でてきた。なごみさんの家で、なごみさんの服を着て、なごみさんと同じシャンプーを使って、体中からなごみさんの匂いがした。神経が昂ぶって寝れる訳がない。
触れられた時、何かが切れた。
俺の中の貞操な部分の何かが、音を立てて崩れた。
今言わないと後悔する、その思いが俺を駆り立てて行動へ移したのだ。
しかも、俺はなごみさんに勢いで告白するまで気付いていなかったが、このもやもやとした気持ちの正体は、『恋』という名前だったらしい。
俺はなごみさんに恋焦がれている。もうずっと前から気になって、かまって欲しくて仕方なかったのだ。
俺の告白に、なごみさんは大笑いしただけで、何も言わなかった。あまりにも清々しい笑い方に呆気にとられる。
そして、俺の頭をぽんぽんと触ってコンビニに行ってくると出て行ってしまった。一人部屋に取り残された俺は、頭が芯まで冷えるのを感じていた。
その時の俺は自分の気持ちを持て余し、整理するのに精一杯で、なごみさんの何も分かろうとしなかった。
なごみさんに忘れられない人が居ることも、その人をいつも探していることも、焦がれて眠れないことも、何も知らなかった。
告白する勇気より、大切な人を忘れようとすることの方がよっぽど勇気がいるんだ。
苦しい俺の恋が始まった。
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